身も心も精進して迎えたまつり当日。三田さんはふんどしに着替え気合十分です。そして午後6時、近くを流れる瑠璃壺川で水をかぶり身を清めたあと、午後10時に祭りはクライマックスです。五穀豊穣にご利益があるとされる「蘇民袋争奪戦」には約270人が参加。汗にまみれた下帯姿の男たちが冷たい空気のなか湯気を出しながら壮絶な奪い合いを繰り広げました。約1時間の争奪戦ののち、最後まで蘇民袋の結び口を握っていたのは、現在の青年部の部長・菊地敏明さんです。最後の蘇民祭で取主となりました。

(菊地敏明さん)
「私にとっては本当に最高に記憶に残るお祭りになりました。」

10年前に祭りに魅了された三田さんは、終了直後から伝統を絶やしたくないという思いがこみ上げていました。

(三田恭諭さん)
「そう簡単に途絶えさせるわけにはいかないので、青年部としても何かしら形を変えて(開催していく)方向で進めていきたい」

1000年以上の歴史に幕を下ろした黒石寺蘇民祭。保存協力会青年部は、来年度以降も蘇民祭に代わる催しを開催できないか黒石寺と協議を続ける予定です

こうした声に対し、黒石寺の藤波大吾住職は「気持ちはわかる」とした上で、「私はやめることを決めた人間ですので、将来のことはわかりません。今言えるのは黒石寺蘇民祭は今年、17日をもって終了となります、ということだけです」と話しました。