政府・日本銀行による為替介入のリスクに日本の個人投資家は警戒感を強め、円売りポジション(持ち高)を大幅に縮小させた可能性がある。さらなる円安を見込むヘッジファンドなどプロの投資家らとは対照的な動きだ。

金融先物取引業協会と東京金融取引所のデータを基にブルームバーグが分析したところ、個人投資家による差し引き(ネット)の円売り建て額は足元で約5000億円の買い建てに転じたもようだ。4月末時点の売り建て額はネットで2兆3314億円と、2020年以来の高水準に膨らんでいた。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した16日までの週のデータによると、レバレッジ型ファンドと資産運用会社が保有するネットの円売りポジションは24年7月9日以来の高水準で、同月2日に付けた過去最高に接近している。

Photographer: Soichiro Koriyama/Bloomberg

円は22日の取引で一時対ドルで161円93銭まで下落。財務省が円買い介入を行った4月下旬の水準を突破し、市場では再度介入が行われるとの見方が強まっている。日銀は16日の金融政策決定会合で、政策金利を31年ぶりの水準となる1%に引き上げたものの、既に利上げに転じた欧州やタカ派姿勢にシフトしつつある米国との金利差はなかなか埋まらず、円売り圧力は依然続いている状況だ。

SBI FXトレードの上田真理人取締役は「個人投資家が介入を期待して逆張りのドルショートを膨らませている可能性がある」と分析。IG証券の石川順一シニアマーケットアナリストも、同社顧客のポジション動向を見る限り、「どちらに振れても良いようにポジションを構築している」とし、買いと売りが「拮抗(きっこう)している状況が見て取れる」と言う。

片山さつき財務相は22日の閣議後会見で、為替については必要に応じていつでも適切に対応すると改めて発言。同日夜には片山氏とベッセント米財務長官とオンラインで会談を行ったことが分かったと共同通信やNHKなどが報じた。

円のボラティリティーは下落局面よりも上昇局面でより大きくなる傾向がある。高市政権の積極財政路線やイラン戦争をきっかけにしたインフレ圧力が円売りを活発化させた半面、日本の通貨当局による円買い介入への警戒感が継続し、今年に入り円上昇時と円下落時のボラティリティー格差は拡大傾向だ。

円高進行時にボラティリティーが急上昇する場合、相対的に金利の低い円を売り、ドルなど高金利通貨を買って金利差を得るキャリートレードにとってはリスクとなる。

ナショナルオーストラリア銀行(NAB)で外国為替戦略責任者を務めるレイ・アトリル氏は、ドル・円について「上値では介入リスク、下値では円ショートのキャリー妙味に挟まれている」と指摘。162-163円台のどこかで再び為替介入があるかもしれないとみている。

金融先物取引業協会のデータによると、5月の店頭外国為替証拠金取引(FX)の取引金額は24年2月以来、2年超ぶりの低水準で、個人投資家の慎重姿勢を示した。

三井住友信託銀行の瀬良礼子シニアマーケットストラテジストは「根深い円安観測があっても、国内の個人は少し手を出しにくいのかもしれない」と話している。

--取材協力:日高正裕.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.