サッカーの2026年ワールドカップ(W杯)の試合観戦に向けて旅行の準備を進める世界中のファンは、すでにチケットの高さに驚かされている。さらに米国の開催都市では、スタジアムまでの移動に費用がかさみ、混雑や時間の負担も大きくなりそうだ。

ニューヨークやボストンでは、資金に余裕のある人であれば、渋滞を避けて移動できるヘリコプターという選択肢もある。ただ、8人乗りで最大3万ドル(約480万円)の費用がかかる。

より手頃な手段としてはレンタカーやウーバーなどがあるが、これらにも問題がある。需要増による料金の上昇や駐車料金の高騰だ。例えば、ニュージャージー州のメットライフ・スタジアム周辺では、駐車スペース1台分に225ドルかかるケースもある。

今回のW杯は、米国11都市とカナダ2都市、メキシコ3都市の計16都市で行われる。開幕まで1カ月余りに迫るなか、多くのファンはホテルからスタジアムまでの移動手段を決めかねている。こうした状況で、新たな費用の存在も次々と明らかになっている。

一部の公共交通機関は、W杯開催期間中の運賃引き上げを明らかにしている。一方、スタジアムによっては公共交通の運行が限られるか、まったく利用できない場合もある。

世界的な舞台での悪評を避けたい開催都市は、こうした課題への対応に追われている。サッカーW杯開催による経済効果は大きく、ニューヨークとニュージャージーでは33億ドルを見込む。国際サッカー連盟(FIFA)は、全米では最大305億ドルに達する可能性があると試算している。

ニュージャージー州のシェリル知事は、大会で110億ドルの収益が見込まれるにもかかわらず、追加費用の負担に応じない国際サッカー連盟(FIFA)の姿勢に反発している。同州にあるメットライフ・スタジアムでは、決勝を含む8試合が開催される予定だ。

同州を運行する交通機関のニュージャージー・トランジットは、大会期間中の鉄道料金の大幅値上げを明らかにしている。マンハッタンと試合会場を結ぶ鉄道の料金は往復150ドルと、通常時の10倍余りとなる。

駅に停車するニュージャージー・トランジットの列車

運賃引き上げはニュージャージー州に限らない。ボストンの公共交通を管轄するマサチューセッツ湾交通局(MBTA)は、ボストン市内からジレット・スタジアムまでの往復運賃を80ドルに引き上げると発表した。

米国の公共交通機関は新型コロナ禍以降、サービスと収支の改善に苦慮している。利用者数は持ち直しつつあるものの、依然として2019年の水準を下回る。運賃収入だけに頼ることは難しく、州の補助金や橋・トンネルの通行料など、他の財源への依存が大きい。

ロサンゼルスでは、節約志向の観客であれば、試合開始の4時間前から運行するスタジアム行きバスを片道1.75ドルで利用できる。一方、車で来場する場合、FIFAの公式駐車場は250ドルからとなる。

フィラデルフィアでは、通常の運賃で試合に向かえば帰路の負担を軽減する措置も検討されている。アトランタでは公共交通の運行時間を延長し、観客誘導のスタッフを配置する。ヒューストンでは、スタジアムへの輸送に向けてバスや列車の増便を計画している。

ニューヨーク市周辺では、ウィングス・エア・ヘリコプターズがマンハッタンとニュージャージー州テターボロ空港を結ぶサービスを提供する。5-6人が搭乗可能で、料金は往復6000ドルから。これに加え、空港が課す特別イベント料金が別途かかる。ブレード・エア・モビリティのマンハッタン・テターボロ間のヘリ便は、往復5700ドルからとなる。

ボストンでは、ほとんどのヘリコプターはノーウッドの小規模空港までしか近づけず、そこからジレット・スタジアムまではなお約14キロメートル離れている。利用客はそこから車で移動できるが、スタジアムに向かう渋滞には他の来場者と同様に巻き込まれる。

ブルーヒル・ヘリコプターズは、ボストンのローガン国際空港とノーウッド間(所要時間約5分)の往復プライベート便を提供しており、料金は最大2万9999ドルとなっている。

同社のチーフパイロット、ブラビーン・マヘンドラン氏によれば、需要は十分にある。「すでにいくつか予約が入っているが、さらに増えると見込んでいる」と語った。

原題:A $30,000 Helicopter or $150 Train: World Cup Transit Is a Mess(抜粋)

--取材協力:Miranda Davis、John Gittelsohn.

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