トランプ米大統領が週末のイランとの協議決裂を受けてホルムズ海峡の海上封鎖を開始すると表明したことで、7週目に入った戦争がさらに拡大するリスクが高まっている。原油価格は急騰し、世界経済への打撃懸念が強まっている。

米軍は米東部時間13日午前10時(日本時間同日午後11時)からイランの港湾に出入りする全ての海上交通を封鎖すると発表した。一方で、イランに寄港しない船舶についてはホルムズ海峡の通過を認めるとしている。イラン最高指導者の軍事顧問モフセン・レザイ氏は、このような措置は「容認しない」と述べ、「対抗するための未活用の強力な手段がある」と述べている。

パキスタンで行われた長時間の協議で米国とイランが合意に至らなかったことから、先週成立した停戦は危機にさらされており、戦争の早期終結期待は後退した。交渉はバンス米副大統領とイランのガリバフ国会議長が主導したが、イランの核開発計画の将来を巡る相違から決裂した。

トランプ氏は12日夜に記者団に対し、イランが交渉のテーブルに戻るかどうかは問題ではないとの認識を示し、ミサイルやドローン(無人機)の製造能力を弱体化させるなど、米国はすでに軍事目標を達成したと主張した。

これに先立ちトランプ氏はSNSで、「準備は万端だ」とし、「イランに残る戦力を一掃する」と投稿。封鎖に対してイランが抵抗した場合には報復すると警告し、「われわれや平和的な船舶に発砲するイラン人は徹底的に打ちのめされる」とした。

こうした展開は、数千人の死者を出し、世界のエネルギー市場を混乱させている戦争の長期化と拡大につながる恐れがある。原油や天然ガス価格の上昇はインフレを加速させかねず、経済成長を抑制する可能性がある。現物供給の逼迫(ひっぱく)を受け、世界各地で精製業者やトレーダーが即時調達可能な原油の確保に奔走している。

ホルムズ海峡は世界で最も重要なエネルギーの要衝で、世界の石油および液化天然ガス(LNG)の約5分の1が通過する。全面封鎖となれば、同海峡を通過しているわずかな輸送も遮断され、原油市場への圧力は一段と強まる。13日午前の取引では原油と天然ガスが急騰し、北海ブレントは一時9.1%上昇して1バレル=104ドル近辺まで上昇、欧州の天然ガス先物も一時18%上昇した。

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の上級研究員ユアン・グレアム氏は、「封鎖はイランへの経済圧力を高める狙いだが、効果が即座に表れることはまれだ。とはいえ、長期的には決定的な役割を果たす可能性がある」と指摘。「米政府が何よりも重視しているのは迅速な成果だ」と述べた。

2週間の停戦合意は4月22日に期限を迎えるが、それ以前に封鎖によって合意が破綻しないことが前提だ。イランのイスラム革命防衛隊は、「いかなる口実であれ」軍艦が海峡に接近を試みた場合は停戦違反とみなすと警告した。イラン国営テレビが伝えた。

イランのアラグチ外相はXへの投稿で、週末に交渉が決裂する直前、米国とイランは覚書の合意に「あと一歩」のところまできていたと述べた。同外相は、交渉の悪化の原因を米国の「過度な要求、目標の変更、そして封鎖」にあると指摘した。

この投稿は、協議終了後におけるアラグチ氏の初の公的な反応となる。同氏は今後の見通しについては言及せず、「何の教訓も得られていない」とし、「善意は善意を生み、敵意は敵意を生む」と記した。

両国は第2回協議の開催を確約してはいないものの、イラン外務省のバガエイ報道官は、複数の分野で理解に達した一方で「2、3の重要な点」で見解の相違が残っていると述べた。

同氏は国営テレビで、「当然、最初から1回の会合で合意に至ると期待すべきではなかった」と述べ、「外交に終わりはなく」、イランは「いかなる状況下でも国益を追求し続ける」と語った。

匿名を条件に語った米政府当局者は12日、イラン側代表団がトランプ政権の主目的、すなわちイランが核兵器を決して保有しないことの保証を理解していなかったのは明らかだと述べた。

ペルシャ湾と広範な市場を結ぶホルムズ海峡は、2月末に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、事実上閉鎖された状態にある。イランは支配を強め一部船舶に通航料を課すなどして、米政府をいら立たせている。

ブルームバーグ・エコノミクスのジェニファー・ウェルチ氏らはリポートで、米国は封鎖を実行する能力を持つものの、多大なコストとリスクを伴うと指摘した。米軍艦はイランのドローンやミサイルの脅威にさらされ、被害が出れば危険なエスカレーションの連鎖を招きかねない。イランと同盟関係にあるイエメンの親イラン武装組織フーシ派も紅海でのエネルギー輸送を妨害する可能性があるという。

同リポートは「封鎖の継続に伴うリスクやコスト、中国など他の関係国からの圧力の可能性を踏まえると、トランプ氏が封鎖を実行しない、あるいは継続できない可能性がある」と指摘。中国が重要鉱物を巡る影響力を利用して米国に圧力をかける可能性にも言及した。

トランプ政権は今年初め、ベネズエラに対しても同様の手法を用い、公海上で制裁対象の原油に対する事実上の封鎖を実施した。トランプ氏は12日で、「違法な通航料を支払う者に公海上で安全な航行はない」と述べた。

動画:バンス米副大統領のイスラマバードでの発言

トランプ氏は他国も封鎖に参加する可能性に言及しているが、同地域へ艦船などを派遣する具体的な国名についてはまだ挙げていない。英政府の立場に詳しい関係者によると、英国は封鎖には参加しない方針だ。英国は同地域に自律型の機雷探知ドローンを配備しているが、他の同盟国と連携して海峡を再開する現実的な計画がまとまった場合にのみ展開するという。

トランプ氏は欧州やアジアの同盟国に対し、ホルムズ海峡の再開に協力するよう繰り返し求めてきたものの、多くは応じていない。英国や日本など一部の同盟国は、戦闘終結後に限り支援する考えを示している。

原題:Trump Blockade of Iran Ports Risks Widening War to High Seas (1)(抜粋)

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