世界的な人気を誇る韓国の男性アイドルグループ、BTSの復帰公演が21日に開催される。ソウル市は数十万人のK-POPファン流入に備え、国家行事並みの体制を整えている。2022年に起きた繁華街・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故がソウルに影を落としている。

「BTS The Comeback Live | Arirang」と銘打たれた21日のイベントは、韓国史上最大の公開コンサートとなる見通しだ。ソウル中心部に最大26万人のファンが集まるほか、Netflixのライブ配信を通じて数百万人が視聴すると見込まれている。韓国の文化的節目であると同時に、同国のインフラにとって重大なストレステストにもなる。

ソウルには大規模イベントを円滑に開催してきた実績がある。毎年の花火祭りには約100万人が集まる。24年12月には尹錫悦前大統領が非常戒厳を一時宣言した後の弾劾要求デモで同規模の人出があった。

一方で、群集管理への警戒は強まっている。梨泰院でハロウィーンのために集まった人々が将棋倒しとなり、150人超が死亡。韓国で最も深刻な雑踏事故となり、群集予測や指揮系統、現場対応の不備を露呈した。都市部の密集環境での管理の在り方が広く問われる契機となった。

今回の会場は、狭く傾斜のある路地で発生した梨泰院の事故とは異なり、約600メートルにわたる広大な花こう岩舗装の歩行者空間、光化門広場で開催される。

慶一大学校のイ・ヨンジュ教授(消防安全学)は「率直に言って、梨泰院のような規模の災害が再び起きる可能性はかなり低い」と分析。「完璧な準備に至らなくても、大規模な群集が危険で重大事故につながり得るという認識が広がったことで、状況は以前とは根本的に異なる」と話す。

梨泰院事故の生存者で30代の作家、キム・チョロン氏も「あの悲劇以降、政府と市民の双方が大規模イベントへの警戒を強めている」と指摘。BTSが世界的な注目を集めることで、当局の準備はより徹底されるとの見方を示した。

ソウルの呉世勲市長は、今回のBTS公演を試練であると同時に機会と位置付ける。最近の会見で、ソウルを世界的文化都市として発信する好機としつつ、「安全で楽しい」イベントとして記憶されるだろうと強調した。

梨泰院で150人以上が死亡した雑踏事故の発生後、警戒に当たる警察官ら(2022年10月30日)

当局は万全の態勢を敷く。李在明大統領は円滑な運営に向けて総力対応を指示した。

警察や消防、他の自治体職員など約1万5000人に加え、BTSの所属事務所「HYBE(ハイブ)」が手配する5000人近くの民間警備員が配置される。ソウル警察は声明で、「市民の安全を最優先している」と説明した。

警察によると、光化門広場の大部分は閉鎖され、入場は専用ゲートに限定される。群集密度が上昇した場合には入場を止める仕組みだ。周辺の建物も多数閉鎖され、「アーミー」と呼ばれるBTSファンが屋上から観覧しようとするのを防ぐ。

イラン情勢で準備が複雑になっている。警察はテロ対策を強化し、会場周辺のゲートに金属探知機を設置するなどの対応を進めている。韓国で同様のイベントでの導入は初めてとなる。

この無料イベントは現地時間21日午後8時(日本時間同)に開演し、約1時間の予定。メンバー7人全員の兵役終了後、3年余りぶりのフルステージとなる。新アルバムの発表に続き、全79公演のワールドツアーの幕開けとなる。無料チケットは2万2000枚にとどまるが、数十万人の来場が見込まれる。開放的な会場構造のため、チケットがなくても周辺の通りから観覧できる。

群集安全の専門家で、英サフォーク大学の客員教授を務めるG・キース・スティル氏は、チケット枚数と来場見通しに大きな乖離(かいり)が生じている点について、即座に警戒すべき兆候だと指摘。雑踏事故を防ぐには、収容可能人数を事前に把握し、それを超えないよう管理することが不可欠だと言う。

チケットがなくてもソウルに向かう予定のBTSファン、ルーシー・ポープさんは、誕生日の週末にシドニーから渡航する。これまでのBTS公演は運営が行き届き、コミュニティー意識も強かったとし、来場者数にかかわらず良い体験になると考えている。人出が多過ぎれば、ホテルに戻って配信を見る計画だという。

「いざとなればホテルの部屋でNetflixを見るつもりだ」とポープさんは語った。

原題:Seoul Ramps Up BTS Crowd Control in Shadow of Itaewon Stampede(抜粋)

--取材協力:Yoolim Lee.

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