数年ごとに開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、野球ファンにとって真の「ワールドシリーズ」とも言える舞台を提供する。大会が最高潮に達する場面では、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)のような熱気が生まれる。

それこそが、WBCを運営する米大リーグ(MLB)が望んでいる姿だ。2006年に初めて開催されたこの大会は、北米以外でのMLBの知名度を高め、野球を世界的なスポーツへと押し上げることが目的だ。その多くの点で、結果は当初の期待を上回っている。

しかし、WBCが成長する一方で、大会の構造や開催時期、運営の在り方は、日本を含む他の参加国・地域の野球機構より、ニューヨークにあるMLB本部の優先事項をより強く反映している。

もし、MLBがWBCを真のW杯へと発展させたいのなら、他の地域にも運営へのより大きな役割を与える必要がある。

実際、米国外で野球人気が高まっている様子を見る限り、大会の運営を委ねても問題はないはずだ。日本の熱気あふれる球場やカリブ海地域の活気ある冬季リーグを見れば、ファンはスタジアムに足を運び、配信やテレビ中継に見入っていることが分かる。

WBCへの関心の高まりも、こうした野球人気の広がりを反映している。大会では各国のスター選手と、国籍や家族のルーツに基づいて代表入りするMLB選手が共演する。例えば、米国生まれの一塁手ビニー・パスクアンティーノ選手はイタリア代表としてプレーする。

2023年大会では、日本と台湾、米国の球場に130万人以上が足を運び、来場者数は過去最多を記録した。テレビ中継も印象的だった。日本では一部の試合が全世帯の40%余りで視聴された。MLBの試算では、大会は最大1億ドル(約160億円)の収入を生み出した。

勢いは衰えていない。今年に入り、2026年大会の初球が投じられる前の段階で、MLBはすでに「すべての商業分野で3桁成長」を達成したとアピールした。ただし、グローバル化という成長機会を、MLBが独占してきた側面もある。

独占放送・配信権

その力関係は、2006年の第1回大会の財務構造にも表れていた。MLBとMLB選手会は利益の半分を確保した。優勝した日本の取り分は10%、準優勝のキューバは7%だった。

大会最初の10年間、日本の選手たちはこうした不均衡な配分に強い不満を示し、将来の大会のボイコットをちらつかせた。幸い解決策が見つかり、今では収入はMLBとMLB選手会、そして各国・地域の野球機構の間で均等に分配されていると、スポーツ・ビジネス・ジャーナル(SBJ)は報じている。

しかし、資金配分が平等になっても、運営の主導権までは平等になっていない。ルールは依然としてMLBが決めている。その最たるものが開催時期だ。

期間はMLBのレギュラーシーズンに影響を与えないよう、春季キャンプの間の数週間という過密スケジュールとなる。だが米国外のすべてのリーグがMLBと同じ日程で動いているわけではない。

例えばカリブ海地域の冬季リーグは晩冬にシーズンを終える。そのため、まだ調整不足の選手もいれば、逆に疲労が蓄積した状態の選手もいる。

MLBにとって、問題は必ずしもその不均衡そのものではなく、誰がリスクを負うかだ。MLBの関心は、MLB選手の健康を守ることにある。選手たちがWBCで米国代表としてプレーしているかどうかは関係ない。

3月初旬の段階では、投手はまだフルゲームを投げる準備が整っていない。MLBによる研究でも、この時期にけがが急増することが示されている。

そのためリスク軽減策として、MLBはWBCで厳格な球数制限を設けている。その結果、監督は長いイニングを投げる先発投手よりも層の厚いブルペンに頼らざるを得ない。春季キャンプに近い感覚で、チームが勝利のために戦力を最大限に生かすことを難しくしている。

問題はグラウンド外にも及ぶ。MLBとMLB選手会は、大会期間中の選手とその年俸を補償するための保険ブローカーを1社に決めており、参加する各国はそのプロセスに関与できない。

もし選手の契約が保険対象外と判断され、所属球団が補償なしでの出場を認めなければ、その選手は大会に出場できない。今年はこうした中央集権的な判断によって複数の中南米系のスター選手数人が欠場を余儀なくされ、プエルトリコが大会不参加を検討する事態さえ招いた。

大会期間中に疎外感を覚えるのは選手だけではない。各国の野球機構やリーグは何十年もかけて自国市場のファン層を築いてきたが、WBCを各国の市場でどのように見せるかはMLBが決めている。

例えば今年、MLBは日本でのWBC独占放送・配信権をNetflixに与えた。収益性の高い契約ではあるが、通常は無料でテレビ観戦できる日本では、有料配信に対する不満が生じた。

こうした決定の積み重ねは、WBCを米国中心の過去に縛りつけるものだ。MLB自らは、グローバル戦略を通じてそこから脱却したい意向を示してきた。幸い、MLBが大会の権限と利益を共有するためのシンプルな一歩は存在する。

まずは、アジアや中南米の主要野球機構を一員として受け入れる独立した大会組織委員会を設立すべきだ。そうした組織があれば、最も裕福で影響力の大きいリーグだけではなく、野球という競技全体の利益を考えてルールや開催地、日程を決定できる。

そのような改革が実現すれば、これまで常に米国で開催されてきた決勝戦の開催国を持ち回り制にすることも可能になるだろう。また委員会が設立されれば、各国・地域の野球機構が自国・地域の市場に合ったメディア契約を交渉する余地も生まれる。ニューヨークでうまくいくモデルが、パナマ市でも通用するとは限らないからだ。

もちろん、人気が高まりつつある大会の主導権を手放すのはMLBにとって容易ではない。それでも、もしMLBが本気で野球の世界的な拡大を目指しているのなら、WBCがその名にふさわしい大会となるよう、今こそ実行に移すべき時だ。

(アダム・ミンター氏は、スポーツビジネスを担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は個人の意見で、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The World Baseball Classic Needs More ‘World’ in It: Adam Minter(抜粋)

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