国際エネルギー機関(IEA)は11日、過去最大規模となる石油備蓄4億バレルの緊急放出を承認した。中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー価格上昇の影響を緩和するため、加盟国が足並みをそろえて対応に当たる。

IEAのビロル事務局長は「われわれは石油市場で前例のない規模の課題に直面している」と声明文で指摘。「IEA加盟国は協調して前例のない規模の緊急措置で対応した」と述べた。

決定は全会一致だったと説明したが、放出のペースや期間、国・地域といった詳細には言及しなかった。これらの情報はエネルギー市場にとって重要な要素となる。

これに先立ち、高市早苗首相は原油輸入が大幅に減少する見通しとなったことから、16日にも日本単独で備蓄を放出することを決定したと明らかにしていた。

首相官邸の発表によると、同日開かれた主要7カ国(G7)首脳オンライン会議で高市氏は、G7で協調して行動したい意向を表明。

また、同氏は会議終了後にX(旧ツイッター)に「IEAで石油備蓄の協調放出で一致したことを歓迎するとともに、私からは、日本が先陣を切って、備蓄放出を発表したことも紹介」したと投稿した。

フランスのマクロン大統領は放出については数日中に調整されると述べたが、一部の国は既に放出予定を明らかにしている。

日本は約8000万バレル、英国は1350万バレル、ドイツは約1950万バレル。フランスは最大1450万バレルとしている。韓国は2250万バレルを放出する予定だ。

石油海上輸送の要衝であるホルムズ海峡の事実上の封鎖が続く中、北海ブレント価格は今週、1バレル=120ドルに迫った。その後は、各国政府が備蓄放出に踏み切るとの観測を背景に、幾分落ち着きを取り戻している。

エネルギー市場の安定にとって最も重要なのは、依然としてホルムズ海峡の航行再開だと、ビロル氏は述べた。

今回の措置は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年に加盟国が最終的に市場に供給した1億8270万バレルを上回る。当時の放出規模は最初の1カ月間で日量200万バレルに相当し、その後延長・追加された。

ただ、対イラン戦争に伴う潜在的な供給喪失は、22年の規模を大幅に上回る可能性がある。

 

減産広がる

ホルムズ海峡の航行がほぼ停止され、貯蔵能力が限界に近づくサウジアラビアなどペルシャ湾岸の主要産油4カ国は、合計で世界生産の約6%に相当する量の生産削減を実施。10日にはアラブ首長国連邦(UAE)が国内最大のルワイス製油所について、同地域に無人機(ドローン)の攻撃があったため予防措置として操業を停止した。

IEAによると、加盟32カ国は12億バレル超の緊急備蓄を保有しており、これには最大規模である米国の戦略石油備蓄(SPR)が含まれる。さらに政府の義務に基づく民間在庫が6億バレルある。

米国のSPRでは現在、約4億1500万バレルの原油が保管されている。SPRは1970年代のアラブ産油国による石油禁輸措置を受けて創設され、メキシコ湾岸にある厳重に警備された4カ所の施設で貯蔵されている。

ただ、備蓄が放出されても、供給不足を速やかに埋められるのか疑問視する向きもある。

シティグループの試算によると、ペルシャ湾岸諸国からの供給減少は日量1100万-1600万バレルに上る。米国がSPRを可能な限り最大限放出し、他のIEA加盟国の放出分を加えても、供給減の一部しか補えない恐れがある。

米エネルギー省のウェブサイトによれば、SPRの最大放出能力は日量440万バレル。大統領が放出を決定してから公開市場にこの石油が届くまでには13日を要する。

原題:IEA to Release Record 400 Million Barrels From Oil Reserves (3)(抜粋)

(高市首相・官邸の発表を加え、第7-8段落に各国の放出予定を挿入します)

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