(ブルームバーグ):中東の混乱に伴う石油化学製品の原料であるナフサ不足に備えて、企業が対応を始めた。日本が輸入の大部分を依存する中東からの供給支障が長期化すれば、川下の自動車などの幅広い産業に影響を与える恐れがある。
三菱ケミカルはイラン情勢の影響で茨城事業所(茨城県神栖市)のエチレン製造装置の稼働率を6日から引き下げた。広報担当者によると、ナフサの輸入量の減少に伴い原料が枯渇して装置が停止することを避けるための措置だという。具体的な稼働率についてはコメントを控えるとした上で、引き下げの期間は決まっていないと述べた。
三菱ケミカルが旭化成と共同運営している岡山県内の工場については、今後の供給見通し次第で判断する予定としている。在庫状況を踏まえ、現時点では減産は行っていないという。出光興産の広報担当者によると、同社はホルムズ海峡の封鎖が長期化した場合、山口県と千葉県のエチレン生産設備を止める可能性があると取引先に通知した。
ナフサはガソリンに似た液体で、エチレンやプロピレンなど石油化学基礎製品の製造に使われる。この基礎製品からプラスチックや合成繊維などの誘導品が生産され、自動車や家電、衣料品などさまざまな製品に使われる。石油化学工業協会のウエブサイトによれば、日本はナフサの約6割を輸入している。さらに輸入ナフサの約7割が中東だ。ホルムズ海峡の事実上の封鎖で供給が滞る中、幅広い産業への影響が懸念される。

東海東京インテリジェンス・ラボの中原周一シニアアナリストは電話取材で、中東からの供給を「代替するのは現実的ではない」とし、エチレン製造装置の稼働を下げる動きが広がるとの見方を示した。
事態が長期化した場合、政府が「どこを優先して、どこに泣いてもらうか決めないといけない。みんながハッピーになるシナリオはない」と同氏は話す。ナフサはガソリンと成分が非常に似ているため、「それを石油化学の原料に回すのか、添加剤を加えてガソリンとして使用するのか、われわれ民間の判断ではなく、政治も絡んだ大きな話にならざるを得ない」と述べた。
日本の化学メーカーの海外拠点では一部川下に近い製品の製造に影響が生じている。住友化学傘下の住友化学アジアは、アクリル樹脂の原料などに使用されるメタクリル酸メチル(MMA)の供給について不可抗力条項(フォースマジュール)を宣言したと発表した。不可抗力条項とは、戦争や自然災害など非常事態の際に、供給義務を免除される仕組みのこと。
同社はシンガポールの拠点でMMAを製造しているが、原料調達先のシンガポール企業、PCSが中東産由来の製品の供給確保が難しくなり不可抗力条項を宣言。その余波を受けた。海外の石油化学メーカーでは、インドネシアのチャンドラ・アスリ・パシフィックや韓国の麗川(ヨチョン)NCCもフォースマジュールを宣言している。
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--取材協力:岡田雄至、清原真里.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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