あなたのテレビが壊れたわけではない。時代の変化を映し出しているだけだ。

ソニーグループは1月、テレビ事業の主導権を中国のTCLエレクトロニクス・ホールディングスに委ねると発表した。これに驚いたソニー製品ファンもいただろう。TCLは世界2位のテレビメーカーだ。

自動車と並び、家電は1970-80年代における日本の躍進を象徴する存在だった。中でもテレビほど輝いていた家電も、ソニーほど名声を誇ったメーカーもほとんどなかった。

ソニー製品はかつて、最先端の代名詞だった。テレビのブランドも、重厚なブラウン管の「トリニトロン」から薄型の「ブラビア」へと進化。今もなおプレミア感でユーザーを引き付けている。

2027年以降、TCLが製造するテレビがブラビアというブランド名を引き継ぐ。ホームエンターテインメント事業で提携するソニーとTCLは、TCLの技術を用いる合弁事業を設立する。TCLが合弁会社の株式過半数を保有することは重要だ。

確かに、一つの時代の終わりを告げる出来事かもしれない。だが、ソニーなど日本の家電メーカー全体がスイッチを切ったわけではない。チャンネルを変えただけだ。

1970年代、ソニーはRCAやマグナボックスといった米国の家電メーカーを市場から押し出した企業群の先頭に立っていた。

ソニーは優れたテクノロジーと、後にアップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏に影響を与えることになる洗練された工業デザインを融合させた。その本質は、「It’s a Sony」というソニーのスローガンそのものだった。

長い間、それだけで消費者には十分だった。今でも一部の人々にとって、ソニーのテレビや日本製品全般は、他では再現できない品質と結び付いている。

だが、少なくともテレビに関しては、その認識はおおむね時代遅れだ。ソニーは長年パネル製造に関与しておらず、2011年に韓国のサムスン電子との合弁事業の持ち分を手放した。

ソニーのテレビ事業は10年にわたって赤字が続いた後、14年に分社化された。現在のブラビア上位モデルは、韓国製ディスプレーにソニーがソフトウエアを加えたものだ。

コモディティー化

日本メーカーは次々とこの分野から撤退した。日本のテレビ産業衰退は、バブル崩壊後の典型的な失策と見なされた。確かに、各社はタイミングを読み違え、誤った技術への投資を重ね、自ら首を絞めた面がある。

パナソニックホールディングスはプラズマに全力を注ぎ、シャープも市場が崩落する直前に液晶パネル生産へと大きくかじを切った。

こうした誤算は、避けられなかった流れを早めただけかもしれない。テレビの価格はここ数十年で、ほぼ他のどの製品よりも急速に下落し、1980年以降99%下がった(同じ程度値下がりしたのはパソコンくらいだろう)。

80年代には世界一の富豪でさえうらやむほどの大型テレビが、今では大学生でも買える価格になっている。

 

日本の経済学者、赤松要(1896-1974)は1930年代、産業が経済発展の段階に応じて国から国へ移っていくとする「雁行形態論」を提唱した。

サムスンとLGエレクトロニクスという韓国の2社が最初にテレビの寡占を崩したが、やがて同じことが韓国勢に起きるかもしれない。依然としてテレビ製造世界一のサムスンにTCLが急接近している。

有機ELのプレミアムデバイスで強みを持つLGは最近、同社が最後まで持っていた大型液晶工場を売却した。買い手は誰あろうTCLだ。

中国勢のテレビ製造支配が目前に迫っているようにも見えるが、将来的にはインドやベトナムとの競争に揺さぶられる可能性もある。

ソニーに対しては、アップルのスマートフォン「iPhone」に対抗する製品を開発すべきだという助言もあった。だがソニーはこれを退け、代わりに、よりコモディティー化しにくいコンテンツへと軸足を移した。

プレイステーション(PS)やアニメなどエンターテインメントへの注力を強め、先端的なイメージセンサー事業さえ分社化を検討したと報じられている。かつてテレビを製造していた他の日本勢も同様に、より専門性の高いバリューチェーンへと軸足を移した。

日立製作所は現在、デジタル事業「ルマーダ」のデータ・分析プラットフォームで多くを稼いでいる。

三菱電機は、派手さはないが収益性の高いインフラなどの分野への取り組みが評価され、株価は上場来高値付近で推移している。東芝の苦境は周知の通りだが、半導体メモリー大手キオクシアホールディングスに2兆3000億円相当の持ち分を保有していることを忘れてはならない。

次に進めなかった企業は苦戦している。その一角、シャープは10年前に台湾の鴻海精密工業に買収された。

テレビはかつて日本の台頭を象徴していた。しかし、それより前の時代は、繊維や玩具がそうだった。日本企業の未来を見たいなら、チャンネルを変えることだ。未来の姿はこれまでと違う場所でオンエアされている。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Sony Switches Off the TV and That’s Just Fine: Gearoid Reidy(抜粋)

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