米国は17日に過去最大規模となる台湾への武器・防衛装備売却の承認を発表した。これはトランプ政権が中国との貿易・経済関係を強化する一方で、台湾との強固な防衛関係を維持する姿勢を示すものだ。

今回承認が発表された武器売却は総額110億ドル(約1兆7100億円)に上る可能性があり、大きな注目を浴びている。中国は強く反発し、同国外務省の郭嘉昆報道官は18日の記者会見で、「断固として反対し、非難する」と述べた。

Photographer: Christopher Lee/Bloomberg

金額の規模は別として、売却案に含まれる兵器システムの大半は、過去にも台湾に売却された実績がある。なお今回のパッケージには、中国の海上侵攻部隊に対抗する手段として以前、台湾に売却された対艦ミサイル「ハープーン」や長距離・精密誘導ミサイル「SLAM-ER」、大型誘導魚雷「Mk48」などの追加分は含まれていない。

ワシントンのシンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」で中国プログラム上級研究員を務めるクレイグ・シングルトン氏は、「このパッケージは台湾を巡る突然の転換ではなく、一段と先鋭な継続性」を示すものだと述べた上で、「米政府は経済的な緊張緩和を模索する一方で、引き続き積極的に抑止力への投資を行っている」と指摘した。

今回の売却承認は一定の安心材料となる可能性がある。中国との貿易関係修復の取り組みの一環として、トランプ大統領が台湾との関係を弱めようとしているのではないかとの懸念の声が上がっていた。

ブルームバーグ・ニュースは9月、中国の習近平国家主席が米国に対し、台湾独立に関する立場を巡る表現を変更するよう、あらためて求めていると報じた。これが実現すれば、中国にとって大きな外交的成果となる。中国はトランプ政権に対し、台湾独立に「反対する」と公式に宣言するよう要請している。

ルビオ米国務長官はその後、米国が中国との貿易合意を結ぶために台湾への長年の支持を放棄することはないと表明した。

国務省は17日の声明で武器売却承認について、台湾の防衛近代化を支援するための「通常の案件」だと指摘。「これは台湾当局と米政府が共有する台湾の防衛ニーズに対する評価を反映しており、台湾が直面する脅威の高まりに見合うものだ」と説明した。

この新たな売却案は、他の対外有償軍事援助(FMS)案件と同様、米議会の承認を必要とする。ただ、これまでの台湾向けパッケージと同じように、上下両院の外交委員会をいずれも難なく通過すると見込まれている。

とはいえ、実際の納入は台湾が米国の製造業者と結ぶ契約次第で、数年単位の遅れが生じる可能性がある。2019年に売却が決定したF16戦闘機は、まだ1機も納入されていない。

承認の対象には、対戦車ミサイル「ジャベリン」、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」なども含まれている。

米下院中国共産党に関する特別委員会のモーレナー委員長(共和)は今回の売却承認に関し、「米国と台湾のパートナーシップを強化するトランプ政権の極めて優れた対応だ」とし、「台湾は自らの防衛に投資しており、抑止力強化のためにこれらの緊急に必要とされる装備が速やかに引き渡されることを望む」と語った。

原題:US Balances Taiwan Backing and China Trade Push With Arms Sale(抜粋)

--取材協力:Courtney McBride、Eric Martin.

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