(ブルームバーグ):アクティビスト(物言う投資家)として知られる米ヘッジファンド運営会社、エリオット・インベストメント・マネジメントはトヨタ自動車グループによる豊田自動織機の買収提案引き上げを目指し、日本の運用会社や機関投資家から支持を取り付けようと働きかけている。
匿名を条件に語った複数の関係者によると、豊田織機株の5%を短期間で取得したエリオットは、パッシブ投資家を含む株主と面会し、この非公開化取引は豊田織機の本来の価値を反映していないと訴えている。トヨタグループは、来年2月以降に豊田織機に対する株式公開買い付け(TOB)を開始する予定だ。
トヨタ不動産(非上場)が豊田織機の非公開化提案を主導している。米国アクティビストファンドと日本の大企業が対立する異例の事態となり注目を集めている。
今回の案件は、世界有数の大型買収となる可能性があるが、予定通りに成立するか疑問も生じてくる。6月に発表されたフォークリフトや織機を製造する豊田織機に対する4兆7000億円の買収額は、企業価値を過小評価しているとの批判が投資家から出ている。
エリオットは豊田織機の保有比率を20%超まで引き上げる可能性を示唆している。エリオットはコメントを控えた。トヨタはブルームバーグの取材に対し「他社と株主との対話については承知しておらず、コメントする立場にない」と回答した。豊田織機は、「エリオット含む株主とは建設的な対話を継続しているが、個別の投資家の活動についてコメントする立場にない」とした。トヨタ不動産からは現時点でコメントが得られていない。
1株あたり1万6300円の買収提案は、豊田織機の少数株主による応募が約20%に達することが成立条件になっている。
豊田織機株は8月下旬以降、TOB価格を上回って推移しており、直近では1500円超上回る場面もあった。投資家がTOB価格の引き上げを織り込んでいることを示している。また、株価がTOB価格を上回ると、少数株主にとっては市場で売却した方がより高い価格を得られる可能性があり、応募インセンティブが低下する要因にもなる。
懸念を示しているのはエリオットだけではない。日本拠点の投資家を含む20社超の投資家が8月、豊田織機とトヨタの取締役会に書簡を送り、この取引には透明性が欠け、少数株主に不利益をもたらすと指摘した。
豊田織機は豊田佐吉氏が創業し、息子の喜一郎氏がトヨタを設立した。喜一郎氏の孫にあたる章男氏は、2023年に会長に就任するまで14年間にわたりトヨタの最高経営責任者(CEO)を務めた。
豊田氏は6月、4月に最初の事前報道が出る前の株価との比較の観点では長期の株主にはプレミアムが付与されているとの考えを示した。トヨタの佐藤恒治社長は10月に、TOB価格を見直す考えはないと述べている。
事情に詳しい関係者によると、エリオットは、価値が上昇している豊田織機の保有株式に注目している。非公開化の提案が公表されて以降、同社が保有する主要な持ち合い株上位10銘柄の時価総額は約30%上昇している。
--取材協力:稲島剛史、高橋ニコラス、リード スティーブンソン.
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