(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインが足元で吹く追い風に乗り切れていない。相場の脆弱(ぜいじゃく)性と流動性の低下が依然として価格を抑える要因になっている。
ビットコインは9日のアジア早朝に一時9万ドルを割り込んだ。その後、ニューヨーク時間では9万4400ドル付近に持ち直している。
ここ数日には、暗号資産にとって好材料が相次いだが、センチメントは改善しきれていない。米商品先物取引委員会(CFTC)は8日、ビットコイン、イーサ、ステーブルコインのUSDCをデリバティブ取引の担保として認める試験プログラムを導入。マイケル・セイラー氏のストラテジーは7月以来の大規模なビットコイン購入を実施した。
先週には、資産運用大手バンガード・グループが自社の取引プラットフォームで暗号資産を主要資産とする上場投資信託(ETF)やミューチュアルファンドの取引を認める方針を示した。しかし、いずれも本格的な復活の起爆剤とはなっていない。
弱地合いが続く背景には流動性の低下がある。データ提供会社カイコによれば、主要取引所での現物取引量は1月のピークから66%減少。同様に、市場が大口取引を大きな価格変動なく吸収する能力を示す市場厚み(マーケットデプス)も、ビットコインとイーサの双方で今年の高水準から約30%低下した。
低調な取引と流動性の低下が新規資金の参入をためらわせ、流動性の薄さと価格の弱さを招く悪循環が生まれている。
香港に拠点を置くマーケットメーカー、Aurosのマネージングディレクター、レ・シ氏は、強制清算の連鎖で急落した「10月10日以降、『流動性が流動性を呼ぶ』好循環が断ち切られてしまった」と指摘する。同氏は「これは鶏が先か卵が先かという問題だ」とし、「機関投資家は再び動く前に強力な下値支持線を求めるが、機関投資家が参加を見送ることで自らが期待する流動性を生むインセンティブが弱まってしまう。同様に、個人投資家も信頼できるストーリーや強気の値動きといったきっかけを待っている」と語った。
米国上場のビットコインETFは、昨年の上場後に価格押し上げの原動力となったが、10月10日以降は52億ドル(約8200億円)超の資金流出となっている。イーサ向けファンドも20億ドル超の流出だ。
足元の低迷により、ビットコインは広範なリスク資産の上昇局面から切り離された状態にある。
B2ベンチャーズ創業者のアーサー・アジゾフ氏は「現在、ビットコインの相当部分が含み損の状態で保有されており、価格が9万6000-10万ドルに近づくたびに、損益分岐で手仕舞いたい投資家の売りが出る」と述べた。「市場は停滞、あるいは足踏み状態にある」という。

原題:Crypto’s Liquidity Engine Breaks Down With $5 Billion ETF Exodus(抜粋)
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