(ブルームバーグ):欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会はこのほど、投資業界向けのESG(環境・社会・企業統治)規則の大幅な見直し案を公表した。EU域内の競争力向上を目的とした抜本的な制度改革を巡り新たな段階に踏み出した。
この案によれば、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)は、ポートフォリオ全体の環境面または社会面での負の影響の報告を運用会社に求めなくなる。
改定後のESGファンド分類の一部として、除外の基準が導入される。改訂後の分類には、環境・社会の移行に特化したカテゴリーが含まれる。
欧州委は声明で、「現行の制度では開示内容が長大で複雑になり過ぎており、その結果、投資家が商品を理解したり比較したりするのが難しくなっている」とし、「改定後の規則は、個人投資家にとってより理解しやすく、企業にとっても使いやすいものになる」と説明した。
現行の制度を巡っては、投資家に加え一部の規制当局からも長年にわたり不満が出ていた。ファンドの開示区分が分かりにくいとされてきたほか、ポートフォリオマネジャーに課される大量のデータ収集の負荷について非現実的だとの批判が絶えなかった。
見直し案は、今月初めの草案とほぼ同じ内容だった。今後、議会や加盟国の承認を得る必要がある。
法律事務所シモンズ・アンド・シモンズは見直しについて、EUの金融業界にとって大変動をもたらすことを意味すると、草案に基づきコメントしている。
欧州委によるSFDRの見直し案は、運用会社だけでなく、銀行や保険会社、年金基金にも適用される。最大手の金融機関のみが、企業サステナビリティー報告指令(CSRD)と呼ばれるESG関連指令の下で環境・社会に対する活動の影響を報告する義務が課されることになる。
欧州委はまた、事業拡大を計画する化石燃料企業について、新たな三つのESGファンド区分のうち、より環境に配慮した二つの区分から除外することを提案している。
世界自然保護基金(WWF)はこの提案について「歓迎すべき一歩」とする一方、石油・ガス企業は全面的に除外すべきだと指摘した。そうしなければ「この枠組みの気候に関する信頼性」が損なわれると主張している。
今回の提案は、規制の簡素化や企業の負担削減に向けたEUによるESG枠組みの広範な見直しの一環となる。
欧州議会は先に、CSRDおよび企業サステナビリティー・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)の要件を大幅に緩和することを可決。主要な議員らは、欧州の競争力向上の必要性を理由に挙げている。
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原題:Europe Unveils Major Overhaul of ESG Investing Rulebook (2)(抜粋)
--取材協力:Lyubov Pronina.
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