(ブルームバーグ):人工知能(AI)半導体市場におけるエヌビディアの支配力に陰りが出ているとの懸念が広がってきた。エヌビディア1強への懐疑論は株式市場にも反映されている。
同社株は25日に2.6%下落。メタ・プラットフォームズがアルファベット傘下グーグルのAIチップ採用を計画しているとの報道が売りを誘った。26日午前の取引では持ち直し、2.2%高で推移している。だが、今月に入って10%値下がりしており、時価総額で5000億ドル(約78兆2000億円)が吹き飛んだ。AIへの過剰投資リスクを巡る警戒に加え、オープンAIなどAI開発企業への循環取引的な投資も不安視されている。
株価の下落に伴い、向こう12カ月の利益見通しに基づくエヌビディアの株価収益率(PER)は26倍未満と、今月初めの約34倍から大きく低下している。
50パーク・インベストメンツのアダム・サルハン最高経営責任者(CEO)は「エヌビディアのバリュエーションは、市場シェアを維持できるとの前提に大きく支えられていた」と指摘。「市場シェアが低下し始めれば、投資家に成長見通しと適切なバリュエーションの再考を促す」と述べた。
ただ、エヌビディア株価は予想PERが約30倍のマグニフィセント・セブン指数ほど割高ではなく、月初来では7銘柄の中で最もパフォーマンスが悪い。だが、エヌビディアの売上高と利益の伸びは他の6社を大きく上回る。今年の売上高見通しは、エヌビディアが63%増であるの対し、7社の中で第2位につけるメタが21%増だ。マグ7はエヌビディアに加え、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、アップル、メタ、マイクロソフト、テスラで構成される。
これだけの高い成長率見通しを踏まえると、エヌビディア株は「今後の潜在力から相対的に割安に見える」とサルハン氏は話す。
もっとも、ウォール街はエヌビディアの成長軌道について大きな懸念を抱いていないようだ。来年度の利益予想は1週間前から12%引き上げられた。ブルームバーグが集計したアナリスト80人のうち74人が「買い」を推奨しており、「売り」は1人のみだ。
唯一の弱気派であるシーポート・グローバル・セキュリティーズのジェイ・ゴールドバーグ氏も、堅調なエヌビディアの決算発表を受けて予想を引き上げている。ただ、懐疑的な姿勢は崩していない。
その理由として「供給制約が解消され始めており、需要に供給が追いつかない局面から供給が過剰になる局面に転じれば、まさにサイクル転換の瞬間を迎える。3カ月以内に起こるとは思わないが、2026年には起こりそうだ」と説明した。
エヌビディアの主要顧客であるハイテク大手は、ブロードコムなど提携先と自社でAIチップの開発を進めており、競争激化の兆しは投資家にとって驚くことではない。
だが、競争が激しくなる中でも、エヌビディアの収益が侵食されている兆しはほとんど見られない。同社が示した2025年11月-26年1月(第4四半期)の売上高見通しは約650億ドルと、ウォール街予想を約30億ドル上回った。
エヌビディアの強気派にとっては、AI投資が拡大している状況でエヌビディアが他社を大きく引き離している現状こそが、依然として将来は明るいとみる根拠となっている。
チェース・インベストメント・カウンセルのピーター・タズ社長は「成長鈍化への懸念が一部の投資家をひるませているのは明らかだ」としながらも、「エヌビディアの成長は依然として十分に力強く、グロース株と捉えることに何の問題も感じていない」と話した。同社のポートフォリオで最大の保有銘柄はアルファベット、次いでエヌビディアとなっている。
原題:Nvidia’s Stock Is Sinking as Doubts About Its AI Dominance Grow(抜粋)
--取材協力:Subrat Patnaik、David Watkins.
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