中国不動産大手の万科は、人民元建て社債の償還延期を初めて提案した。予想外の動きで、経営危機にある不動産開発会社を救済する意思が政府にあるのか、あらためて問われそうだ。

26日遅くに上海清算所に提出された文書によると、万科は12月15日に満期を迎える20億元(約440億円)の社債元本の支払い延期を求めている。これについて協議するため、万科は債権者との会合を12月10日に開く方向で調整するという。

深圳を拠点とする新興の格付け会社レーティングドッグ(YY評級)の創業者、姚煜氏は「市場にとって、償還延期は極めて予想外だった」と指摘。過去1年の政府系大株主による万科への支援は「突然、意味を失った」と述べた。

不動産セクターは過去数年にわたり、中国経済の足かせとなっている。業界の中で比較的健全と見なされていた万科の債務問題は、同業界に対する当局の姿勢を示すバロメーターと考えられるようになった。当局者は記録的なデフォルト(債務不履行)で危機に陥っている不動産市場を再生しつつ、個別企業の救済に深入りし過ぎない微妙なバランスをとろうとしている。

万科の社債と株式は今週に入り、大きく売られていた。人民元建て社債のいくつかは26日に下げを拡大し、取引が一時停止された。ドル建ての2027年償還債は額面1ドル当たり約40セントに下落した。

株価は後場に売られ、香港上場株は6.3%安の3.88香港ドルと、1年2カ月ぶりの安値で引けた。

万科は12月15日が償還期限の社債のほか、同月28日に満期になる37億元の元建て債も抱える。この2本の社債は最近まで額面付近で取引されており、期日に予定通り償還されると投資家が見込んでいたことが示唆される。

万科の筆頭株主である国有企業の深圳地鉄は約300億元の融資を提供し、資金繰りに苦しむ万科の今年の社債償還を支援してきた。だが、深圳地鉄は万科向けの融資条件を厳格化したことを示唆しており、この命綱を万科は頼り続けることができるのか不確実となった。

ブルームバーグの試算によると、来年6月末までに満期または早期償還オプションの期日を迎える万科の人民元建て債は総額約134億元に上る。この額は、万科が深圳地鉄から借り入れた未利用の資金を大きく上回る。

事情に詳しい関係者が先週述べたところによると、中国政府は住宅市場回復に向けた新たな措置を検討しており、新規の住宅ローンに対する金利補助などが候補に挙がっている。だが、昨年9月に打ち出した支援策の効果は短期間しか続かなかった。

中国のハイイールド債を専門とする北京根本私募基金管理中心の創業者、李根氏は「万科が今回デフォルトすれば、政府による救済措置の有効性は崩れ去る。その場合、住宅価格の下落は加速し、他の国有不動産開発会社の信用力も問われそうだ」との見方を示した。

原題:China Builder Vanke Seeks Extension on Yuan Bond for First Time(抜粋)

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