(ブルームバーグ):高市早苗首相は14日、近年の日本企業が株主への分配を過度に重視してきたとし、今後は従業員への利益還元にも十分配慮した経営を求めた。

参院予算委員会で、企業行動について「株主に目を向ける行き過ぎた傾向があったのではないかと思っている」と述べた。その上で、「コーポレートガバナンス・コードを改定し、企業が経営資源を株主還元のみならず、働いている方々も含めて適切に配分するということを促していく」とも語った。
国民民主党の川合孝典氏への答弁。川合氏は企業収益の労働分配率向上に向け、追加的な政策が必要だとして首相の見解をただした。首相は、過度に内部留保をため込むのではなく、賃上げを含む人への投資に活用するよう求めた。
コーポレートガバナンス・コードは企業統治の原則・指針を示したもので、政府方針を踏まえ、東京証券取引所が策定した。金融庁は10月21日、有識者会議で改定に向けた議論を開始している。首相としては安定的な賃上げ実現を求める立場から同コードの見直しに言及した形だ。
ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長は、同コードの見直しで企業の資本配分戦略で裁量の余地を狭め、場合によっては株主利益に反する事態が生じる可能性も想定されるとの見方を示した。外国投資家から見て「日本のコーポレートガバナンス改革が後退しているように映ることは、望ましい状況ではない」とも述べた。
ただ、答弁で首相は必要と考えている見直しの詳細には触れなかった。東証が公表している同コードでは「株主の権利・平等性の確保」に加え、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」も柱の一つとして既に掲げている。
フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は同コードの範囲内で「株主以外にも目を配るということであれば問題ない」と指摘した。その上で、「今のやり方を大きく変えるというのは、少し行き過ぎな気もする」と語った。

最低賃金
一方、石破茂政権が掲げた2020年代に全国平均で時給1500円とした最低賃金の引き上げ目標の継承に慎重な考えを示した。立憲民主党の古賀之士氏への答弁。
高市首相は「責任を持って数字を示すことを考えると今、必ず、いつまでにいくらということを申し上げるわけにはいかない」と語った。首相として金額を明示した場合は中小企業、小規模事業者に対応を「丸投げしてしまうこと」になり、「とても無責任なことだ」とも述べた。
最低賃金を1500円とする目標は岸田文雄政権が「30年代半ばまで」の実現を目指す方針を打ち出したが、石破政権が前倒しした。
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--取材協力:横山桃花、石川英瑠、堤健太郎、田村康剛.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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