高市早苗政権の景気刺激策で不動産投資信託(J-REIT)市場の活況期待が高まっている。インフレ下で資産需要が拡大するとの見方から、東証REIT指数は今年、4年ぶりに上昇に転じる勢いだ。

高市首相は経済財政諮問会議の民間議員にリフレ派の識者を起用し、経済対策の策定に注力する姿勢を示すなど、積極的な財政拡張路線に打って出ている。財政悪化への懸念が日本国債や外国為替市場の円相場の重荷となる一方で、インフレが続けば不動産関連資産には賃料上昇期待が追い風となり得る。

こうした見方は東証REIT指数に表れている。これまで金利上昇による資金調達コストの上昇懸念で軟調地合いにあったが、今年は21%高と、MSCI米国REIT指数の0.2%安を大きく上回る。年間で上昇すれば2021年以来となる。

REITの運用を手がけるしんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、日本成長戦略会議も積極財政派の有識者が多く、高市政権の景気刺激策への「本気度が伝わる」と指摘する。インフレ期待がREITの支えになるとし、「今がピークという感じはない」との見方を示した。

日本銀行が9月に保有するJ-REITの売却開始を決め、相場への影響が警戒される局面もあった。ただ、オフィス賃貸仲介業の三鬼商事が発表した10月の都心部オフィス空室率は2.6%と8カ月連続で低下し、20年6月以来の低水準となるなど、足元はファンダメンタルズも堅調だ。

「他の先進国市場と比べて東京のオフィス空室率が極めて低いことは、日本のREIT市場に対する明るい見通しを支える主な要因」だと、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニアアナリスト、パトリック・ウォン氏は話す。

30年に及ぶデフレ経済で定着した商慣行から、日本の賃料がどんどん上昇していくことには懐疑的な見方もある。

みずほ証券の大畠陽介アナリストは「世界的にはインフレヘッジとして不動産は良いと言われるが、日本では賃料の成長は遅れてくる懸念がある」と話す。同氏は来年度末の東証REIT指数を2100ポイントと予想しており、13日の終値比からの上昇余地は5%弱にとどまる。

とはいえ、指数のNAV倍率(時価総額を純資産総額で割った指標)は0.9倍台にとどまり、バリュエーションは依然として割安だ。

しんきんアセットの藤原氏は、金利が落ち着いており、オフィスを中心に不動産市況は非常に良好だとし、割安感やインフレに強い点を考慮するとREITには投資妙味があるとの見方を示した。

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