ウクライナ政財界のエリートを巻き込む汚職スキャンダルが拡大する中で、ゼレンスキー大統領は徹底した捜査への支持を約束した。このスキャンダルでは、大統領の元ビジネスパートナーにも疑惑がかかっている。

1億ドル(約155億円)にも及ぶ公金横領の首謀者として捜査当局が12日発表した中に、テレビ制作会社共同オーナーのティムール・ミンディッチ氏の名前があった。同氏は大統領選挙に出馬する前のゼレンスキー氏を一躍有名人に押し上げた。

この汚職捜査では既に、閣僚2人が辞任。捜査当局によると、ロシアの空爆から原子力エネルギー施設を保護するための防衛インフラ建設を請け負った業者からリベートを受け取る仕組みが有力者の間で構築されていた。

ゼレンスキー氏は12日にキーウで行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「最も重要なのは、罪のある者に裁きが下されることだ」と述べ、「戦時中の国の大統領は、友人など持てない」と続けた。

ウクライナのゼレンスキー大統領(12日、キーウ)

ゼレンスキー氏は12日、今回の汚職事件に関与した疑いがある元ビジネスパートナーのミンディッチ氏および、別の実業家であるオレクサンドル・ツクルマン氏に対して制裁を科すよう政府に要請した。ミンディッチ氏は当局が刑事捜査を発表する数時間前にウクライナを出国したと、国境管理当局が説明した。

ゼレンスキー氏はブルームバーグに対し、捜査が発表されて以来、ミンディッチ氏とは連絡を取っていないと述べた。

ゼレンスキー氏は今年7月、汚職捜査機関の権限を弱めることを試みていただけに、この汚職疑惑は同氏にとって大きな試金石となりつつある。7月の当時は大規模な街頭デモが発生し、欧州連合(EU)などの批判もあってゼレンスキー氏は動きを撤回せざるを得なくなった。

エネルギーインフラを標的としたロシアの攻撃で電気を失う地域が増えている中で、汚職がウクライナの防衛能力を損ねているとして国民の怒りは高まっている。

こうした状況にハンガリーのオルバン首相は13日、フェイスブックへの投稿で「EUは混乱の中に欧州の税金を注ぎ込みたいのか」と、ウクライナ支援に反対の立場をあらためて強調。「戦争で使われなかった資金を戦争マフィアが盗んでいる。ばかげている」と続けた。ただ、オルバン氏も自国では汚職スキャンダルに揺れている。

汚職疑惑を巡って、辞職したウクライナのハルシチェンコ法相とフリンチュク・エネルギー相はいずれも不正行為を否定しているが、ゼレンスキー氏が辞任を要求した。ミンディッチ氏は国内エネルギーセクターの資金の流れを管理し、閣僚らに対して影響力を行使していたと、特別汚職対策検察官は11日に法廷で述べた。

ゼレンスキー氏はインタビューで、「この捜査の対象には、政府当局者や企業が含まれている」とし、「まず閣僚らには政治的な責任がある。そして、捜査や裁判所の判断に応じ、別の責任も問われることになる」と語った。

原題:Zelenskiy Vows to Root Out Corruption as Scandal Deepens (1)(抜粋)

--取材協力:Michael Nienaber、Zoltan Simon.

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