(ブルームバーグ):米史上最長の政府機関閉鎖が続く中、為替トレーダーのパフォーマンスが過去数十年で最悪となっている。経済指標の発表が途絶え、ドルの先行き見通しが不透明になっていることが背景にある。
バークレイヘッジの指数によると、外国為替投資家の年間成績は2005年以来の低調となる見通しだ。データの空白が生じる前から、ウォール街では既に打撃が出ており、ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)などは7-9月(第3四半期)の為替トレーディング収入の減少を報告した。
政府閉鎖に伴い、重要な経済統計や市場ポジションのデータが数週間にわたって公表されていない。この影響で、トレーダーはドルの行方に関する大きな賭けを控えており、コンピューター主導のクオンツファンドは高品質なデータを十分に活用できない状況だ。さらに、ストラテジストは予測の更新を先送りしている。
結果として、為替市場のボラティリティーは長期平均を大きく下回っている。4月にトランプ米大統領が世界的な関税措置を発表した当時見られた激しい値動きとは対照的だ。
スコシアバンクのチーフ通貨ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は今週のリポートで、「今年は外国為替投資家にとって総じて厳しい年になりつつある」とバークレイヘッジの指数を引用して指摘した。同指数は為替先物やキャッシュフォワードを取引する25の通貨プログラムを追跡する。
「全体的に弱い今年のリターンは、今後数カ月にわたって市場に影響を及ぼす可能性がある」と同氏はいい、リターンの低迷が続くようなら、トレーダーは「リスクポジションを拡大することに一段と慎重になる」だろうと付け加えた。

主要経済データの欠如が追い打ちをかける前から、為替トレーダーは既に厳しい局面に見舞われていた。関税を巡る混乱の中、長年維持されてきた複数の相関関係が崩れ、市場は追跡が難しい資金フローやヘッジ戦略の変化に左右されるようになった。
その結果、多くの投資家がポジションを縮小し、慎重な姿勢を強めた。世界で最も取引量の多い通貨ペアであるユーロ・ドル相場の先行き信頼感を示す指標は、過去最低水準に近づいている。
こうした中、資金フローに関する独自の分析指標に加え、ADPリサーチ・インスティテュートや米供給管理協会(ISM)などの民間データが、これまで以上に重要な役割を果たしている。
オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、ローレン・ファン・ビリョン氏は「われわれは代替データに大きく依存せざるを得ない」と指摘する。「今年は全体的にノイズが多く、反応的な展開が続いたため、大きなポジションに集中するよりも、リスクを分散して小規模なポジションを複数取る方が成果を上げやすかった」と話した。
「大幅に減少」
為替の変動が落ち着くにつれ、大企業が急いでポジションをヘッジする可能性は低下している。資産運用会社やヘッジファンドが為替変動を利用して利益を上げる余地も限られており、こうした要因が収益減少につながっている。
モルガン・スタンレーのシャロン・イェシャヤ最高財務責任者(CFO)は、10月15日に開いたアナリストとの電話会見で、7-9月期の為替トレーディング減速に言及した。ゴールドマンの四半期決算資料によると、為替取引の純収入は前年同期比で「大幅に減少した」と記されている。BNYメロンでは、7-9月期のFX収入は前年同期比で5%減少した。
モルガン・スタンレーとBNYメロンの広報担当者はコメントを控えた。ゴールドマンの担当者はコメント要請に応じなかった。
為替市場の予測は常にさまざまなデータをつなぎ合わせる「モザイク」のような作業だと語るのはRBCキャピタルマーケッツの為替ストラテジスト、リチャード・コチノス氏だ。それがここ数週間に一段と難しくなったという。
「米国のデータに大きな空白がある状況では、自然と慎重にならざるを得ない」と同氏は指摘。顧客の間でドルに対する見方がより中立的になっているとし、「ドルに関しては強気、弱気いずれの方向にも積極的なポジションを取るのは非常に難しい」と続けた。
原題:US Shutdown Compounds Worst Year for Currency Trading Since 2005(抜粋)
--取材協力:Vassilis Karamanis.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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