(ブルームバーグ):連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利を引き下げ、多数の米企業が決算を発表した。10月は投資家に「人工知能(AI)」という宿題を残して終わった。
ハイテク大手は依然としてAIインフラに巨額を投じており、投資家の期待を支えている。S&P500株価指数とナスダック100指数はいずれも週間で上昇し、過去最高値付近にある。
一方で、短期的な成果が見えない企業には投資家の厳しい視線が向けられており、AI支出に対する曇りのない楽観ムードにも変化が出てきた。メタ・プラットフォームズではAI関連の投資拡大に対する懸念から、株価が3年ぶりの大幅安となった。マイクロソフトもクラウド収益が期待に届かず、2日間での株価下落は4% を超えた。

チャールズ・シュワブのマクロ調査・戦略責任者ケビン・ゴードン氏は、投資家が企業の投資規律をチェックする動きが出ていると指摘。「この投資がどれほどのリターンを生むのか、いずれ証拠が求められるだろう」と述べた。
対照的にアマゾン・ドット・コムとアルファベットの決算は好意的に受け止められた。アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)の成長加速は、10月31日の市場でアマゾン株を10%近く押し上げた。アルファベット株もAIとクラウド需要の急増を好感し、30日に2.5%上昇した。
増収
投資家は増益率をこれまで以上に重視し、AI投資というだけで満足はしないようになった。アルファベットとアマゾンはAI投資の継続を表明しただけでなく、過去の投資で既に成果が出ていることも示した。アルファベットは生成AIモデル関連の収益が前年の3倍を超えた。グーグル・クラウドの売上高も34%増の152億ドルと、アナリスト予想を上回った。アマゾンもクラウド事業の力強い成長に加え、アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)が買い物チャットボットの投入で年100億ドルの追加売上高を見込むと明かした。
AIによる増収の裏付けを示すクラウド事業がないメタは、広告ターゲティングなどの改善を強調したが、過剰投資を警戒するウォール街の懸念を緩和できなかった。ジェンセン・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、アレン・ボンド氏は「設備投資の増加が一律に評価されなかったのは、今期が初めてだ」と述べた。
青信号
それでも業界最大手によるAI投資継続を、AIトレードの青信号と受け止める投資家は多い。特にAI半導体を事実上独占するエヌビディアは、株価が週間で9%上昇し、時価総額は世界初の5兆ドルを突破した。株価上昇の波はシーゲイト・テクノロジーやウエスタン・デジタル、スーパー・マイクロ・コンピューター、ブロードコムなどにも広がった。建機大手のキャタピラーもデータセンターの建設需要を追い風に、10%急伸した。
AI投資で出遅れているアップルも、強弱混在の決算にもかかわらず株価は週間で約2.9%上昇した。
予想を上回る
ハイテク大手の利益は全体として市場予想を上回り、割高感が警戒される株式市場を支えている。テスラを含むいわゆる「マグニフィセントセブン」のうち、6社が決算を発表した。ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによると、グループ全体の四半期利益は約27%増と、決算前に予想されていた15%を大きく超えた。一方、S&P500種の増益率は13%にとどまっている。
シュワブのゴードン氏は「予想自体が高くなっていたが、実際の決算はそれも上回った」と述べた。「市場にとっては非常に心強いサポートだ」と続けた。

ラスボス
発表済みの決算はAIトレードの追い風となったが、トリを飾るエヌビディアの決算発表(11月19日)まで、投資家はあと3週間待たされる。ジェンスン・フアンCEOがワシントンDCで強気の見通しを示したばかりで、期待は高まっている。AI市場の中核を担う同社だけに、決算が期待に届かなければその影響は広範囲に拡大しかねない。
それでも投資家はこの流れを楽しんでいる。BNYの市場マクロ戦略責任者ボブ・サベージ氏は「ハイテク大手は期待されていた好決算を実現してみせた」と指摘。「これほど一貫して稼いでいるセクターに弱気になるのは難しい」と語った。
原題:Big Tech Earnings Reveal Cracks in Case for Massive AI Spending(抜粋)
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