米フィンテック企業のファイサーブの株価は29日、過去最大となる44%の急落となった。同社に対し「売り」の評価を付けていた唯一のアナリストは、数カ月前からその兆候が出ていたとしている。

多くのウォール街関係者にとって、予想を大幅に下回ったファイサーブの業績は想定外だった。ファイサーブを担当するアナリストの約8割は、今週の早い時点で「買い」に相当する評価を同社に付与していた。その中で英ロスチャイルド・レッドバーンの26歳のアナリスト、ドミニク・ボール氏は4月時点で「売り」のレーティングを付けていた。

ボール氏の悲観的な見方は的中した。ファイサーブ株は通期利益見通しを引き下げたことなどに伴う29日の急落で、時価総額で約300億ドル(約4兆6200億円)が失われた。

問題の中心は、過大な手数料で顧客の不満を買っていた主力の販売時点情報管理(POS)システムだった。ボール氏のリサーチでは、「クローバー」と呼ばれるこのシステムの利用者と広範に対話を重ね、問題点を取り上げていた。

小売業者との対話を通じて「現場で起きていることと、投資家が想定していた状況との間に大きな乖離(かいり)があった」と同氏は指摘。顧客からは感謝の声が届いたという。

ファイサーブ株の急落は、ウォール街の調査体制を巡り指摘されてきた問題をあらためて浮き彫りにした。企業の強みや弱みを投資家に常に伝える責任を負う者が、しばしば過度に楽観的な分析を示している状況だ。

ブルームバーグがまとめたデータによればS&P500種株価指数の構成銘柄に対するアナリスト評価で、「売り」に分類されるものはわずか5%にとどまる。

ボール氏にとってファイサーブの問題が明確になったのは、競合企業トーストをカバーする一環で2023年に半年かけPOS事業者を詳細に調査した結果だった。

同氏によれば、クローバーの問題は販売網と市場シェアの伸び悩みから生じていた。取引の処理に使われるこのシステムは、年間売上高が20万-25万ドルの小売店では好調だったものの、昨年末までにそうした市場の大半を取り込み済みだったという。

 

原題:Fiserv’s Only Bear Is a 26-Year-Old Analyst Who Beat Wall Street(抜粋)

--取材協力:Matt Turner.

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