(ブルームバーグ):20日の日本市場で株式は大幅反発。日経平均株価の上昇率は一時3%に達し、取引時間中で初めて4万9000円台を付けた。米中貿易摩擦や米地銀を巡る警戒が後退したことに加え、自民党と日本維新の会が連立政権の樹立で実質合意したことを受けた政策期待も相場を押し上げている。
債券は先物や中長期債が下落(金利は上昇)し、円相場は対ドルで一時151円台前半まで売られた。自民党の高市早苗総裁が首相に選出される可能性が高まり、同氏が主張する財政拡張的な政策を見込んだ株高・円安・債券安という「高市トレード」の様相となっている。
みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは「高市政権への期待が高まっており、積極的な財政政策を見込んだ買いが加速している」と指摘した。
自民党と日本維新の会は新たな連立政権の樹立で実質的に合意した。連立合意に伴い、21日召集の臨時国会で行われる首相指名選挙で維新は、高市氏に投票する方針だ。
株式
株式相場は大幅高。業種別では電機や自動車など輸出関連、銀行など金融、情報通信などが相場をけん引し、ほぼ全面高となっている。
ソフトバンクグループやソニーグループ、トヨタ自動車など主力大型株を中心に幅広く買いが先行。みずほの三浦氏は、前週末の米国株の上昇が、国内の特にハイテク株に波及しているとの見方を示した。
高市氏の政策期待をテーマとした売買も目立つ。核融合関連の助川電気工業は一時ストップ高水準まで買われ、サイバーセキュリティ関連のFFRIセキュリティ株も急騰した。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは「米国では地銀リスクは広がっておらず、米中貿易問題は激化していない」と指摘。高市氏の積極的な財政政策による景気改善や産業政策への期待を株価が織り込むとの見方を示した。
トランプ米大統領は17日、中国との通商交渉に関して楽観的な見方を示すとともに、習近平国家主席との会談は予定通り行われるようだと述べた。また、今年に入り米中が表明している関税について「持続可能ではない」とも発言した。
債券
債券相場は中長期債が下落。米国市場で米中貿易摩擦を巡る懸念が和らぎ、リスク回避で買われていた国債が売られ、長期金利が上昇した流れを引き継いでいる。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「前週末に米地銀問題でリスクオフで買い進まれた反動の売りが出ているほか、高市政権の誕生で政治混迷の解消、政権の安定で日本銀行が利上げを行いやすくなるとの観測も売り要因となっている」と述べた。
一方、超長期債は底堅い。長谷川氏は「自民党執行部人事は財政規律を重視している人が就いているほか、日本維新の会は財政健全化を重視する政党とみられ、高市氏が主張していた財政拡大路線ではなさそうだとの受け止めになっている」とみる。
為替
東京外国為替市場では円売りが先行し、対ドルで一時151円台前半まで円安が進んだ。貿易問題を巡る米中の緊張が緩和に向かうとの期待からリスク回避が一巡し、ドルが買い戻されている。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は「高市氏が首相になる可能性が高まっており、高市トレードの再燃を意識して円売り地合いになっている」と話す。その上で、「今週末に向けて米消費者物価指数(CPI)など指標発表が予定されているほか、米中貿易対立の問題もあり、ドル・円は上値を追って買い進みにくい」との見方を示した。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.