(ブルームバーグ):財政拡大派の高市早苗前経済安全保障相が事前の予想を覆して自民党新総裁に就任し、超長期債利回りが急騰(価格は下落)した中で投資家やトレーダーは7日の30年利付国債入札に臨むことになる。
高市氏の勝利を受け、財政出動を伴う景気刺激策への期待が高まった6日の国債市場では、30年債利回りが一時14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い3.29%と過去最高を更新。20年債や40年債利回りも大きく上昇した。先週行われた2回の国債入札も低調に終わり、市場心理が悪化しているだけに世界の投資家も今回の30年債入札の行方に注目する。
超長期債といった期間が長い国債は財政リスクがより反映されやすい。機動的な財政政策を含むアベノミクス継承者とされる高市氏の自民総裁就任で財政懸念が市場でクローズアップされている形だ。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、高市氏の勝利で超長期ゾーンは財政悪化や格下げの可能性が意識されていると指摘し、30年債入札は「弱い結果を予想している」と言う。
米ゴールドマン・サックス・グループのストラテジスト、ビル・ズー氏は、高市新総裁の誕生を受けて超長期債を中心に日本国債のボラティリティーが上昇している現状は、米国や英国など世界の債券市場にも波及しかねないと警戒感を示す。
財政懸念の高まりで欧州やアジア諸国の多くで6日は国債利回りが上昇、米国債もこうした流れに追随した。

4日の自民党総裁選では、小泉進次郎農林水産相が優勢という事前予想に反して高市氏が勝ち、初の女性総裁となった。高市氏は、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の路線を継承する1人と市場ではみられている。さらに同党は現在少数与党のため、減税を主張する野党と今後連携していく可能性もあり、財政拡大懸念を強める一因となっている。
傾斜化
6日は超長期債が軒並み売られた半面、日本銀行による10月利上げ観測が後退し、2年や5年など中期債が買われ、5年債と30年債の利回り差は206bpに広がり、主要先進国市場の中で最も顕著だった利回り曲線(イールドカーブ)の傾斜(スティープ)化がさらに進んだ。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、利率は高くても需要は強くない可能性があり、「入札は慎重な姿勢が求められる」と語る。生命保険会社など超長期債の主要投資家は様子見姿勢を続け、利回りの低下は難しいとみる。
もっとも、30年債利回りは入札前の急上昇で過去最高に達しており、目先は売られ過ぎと判断した向きから買いが入る可能性はある。財務省は10-12月期の流動性供給入札で、残存年限が15.5年超39年未満の超長期債の発行額を減らす計画。需給面で投資家の安心感を誘う余地を残す。
30年債入札の結果は午後0時35分に発表される。投資家需要の強弱を示す応札倍率や、平均落札価格と最低落札価格の差(テール)の動向が注目される。前回9月の応札倍率は3.31倍で、過去12カ月の平均とほぼ同水準だった。
(第3段落に世界的な国債利回り上昇について追加して更新します)
--取材協力:清原真里.
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