世界最大級の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、社会課題の解決と収益性の両立を図るインパクト投資戦略を検討していることを受け、国内の運用会社の間で商品戦略を見直す動きが広がっている。

運用資産総額は約260兆円のGPIFは今年3月、サステナビリティー投資方針を示し、インパクト投資導入に道を開いた。各年金基金の運用方針を確認したところ、少なくとも他に、日本の年金基金4基金が投資方針の改定や見直しを進めている。これを受けて年金運用の受託を目指す資産運用会社の間で、インパクト投資への需要拡大に合わせて戦略を調整する動きが見られる。

背景には政府の後押しもある。政府はインパクト投資戦略について、日本が直面する現実的な社会課題解決に向けた手段の一つと位置づけてきた。

GPIFの内田和人理事長は、環境・社会目標を重視した投資アプローチが、最終的には経済や資本市場の成長につながるとの考えを明確に示している。

GPIFの内田和人理事長

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループでマネジングディレクター兼サステナビリティー・トランジション戦略グローバル責任者を務めるアニケット・シャー氏はインパクト投資について、現実社会への影響を投資家が測定できることから、基本的なESG(環境・社会・ガバナンス)リスクのスクリーニングに比べ強力な手法となり得ると説明する。

GLINインパクトキャピタルのパートナー、中村将人氏によると、日本でインパクト投資戦略は、気候変動や医療、ウェルビーイング(心身の健康や幸福)、包摂性といった分野を中心に展開される見込みだという。同社は、GPIFなど日本の年金基金とインパクト投資戦略を巡る会合に参加した。中村氏によれば、GPIFはまずこの戦略を上場株式に適用し始めるとみられる。

GPIFは、インパクト投資戦略にどの程度の資金を振り向ける可能性があるかを明らかにしていない。

GPIFはESGやインパクトを考慮した投資などを含めてサステナビリティー投資と定義。「ポートフォリオ全体の長期的なパフォーマンス向上という目的を実現するための重要な手段」と位置付けている。

GPIFの広報担当者は電子メールで、インパクトを考慮した投資に関する調査研究を実施する予定だと説明。既存投資案件におけるインパクト指標の計測や報告、インパクトと投資リターンとの関係などが調査研究の対象に含まれるという。

「この調査研究が終了するまでは、投資額や投資時期など具体的なことを申し上げることは難しい」とし、「具体的な投資対象についても、何も決まっていない」とコメントした。

原題:World’s Biggest Pension Fund Puts Impact Investing on the Agenda(抜粋)

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