(ブルームバーグ):自民党の高市早苗総裁は党役員や首相指名を前提とした閣僚の人事に着手している。挙党態勢の確立を目指しており、総裁選を争った小泉進次郎農相や茂木敏充前幹事長らの処遇が焦点だ。

「全員活躍、全世代総力結集、みんなで力を合わせて取り組んでいく自民党にしたい」。高市氏は4日の総裁就任会見で、今後の新体制で党の結束を図る考えを示した。総裁選に立候補した4氏に関しても「全員、活躍をしていただく」と協力を求める方針だ。
約1年で退陣する石破茂政権では総裁選のライバルだった高市、茂木両氏らが要職につかず、挙党態勢構築に失敗した。森山裕幹事長ら一部のメンバー頼みのまま、少数与党下の厳しい政権運営を強いられた。党内から幅広い協力を得る布陣を組むことができるか。党役員と閣僚の人事は高市氏にとって最初の関門となる。
共同通信によると、高市氏は党運営の要である幹事長に鈴木俊一総務会長を起用する方針を固めたほか、総裁選で支援を受けた麻生太郎元首相を副総裁、旧茂木派の木原稔前防衛相を要職に充てる案が浮上した。7日にも新しい執行部を発足させる方向という。
麻生、鈴木両氏は共に財務相経験者で野党が主張する消費税減税には否定的な見解を示してきた。両氏の要職起用は財政規律にも配慮する姿勢も示すことにつながる。

総裁選に立候補した4氏に関しては、外相に茂木氏を充てる方針と朝日新聞が報じた。小林鷹之元経済安全保障担当相も重要閣僚、小泉氏は農相と別の閣僚で処遇する意向だという。今回の人事では総裁選で高市氏を支援した萩生田光一元政調会長ら旧安倍派議員の起用も注目されている。
女性が首相に就任するのは憲政史上初めてとなる。JNNが4、5両日に実施した世論調査によると、高市総裁に「期待する」とした人は66%、「期待しない」は26%だった。石破内閣の支持率は9月の調査から6.0ポイント上昇し、43.7%だった
6日の日本市場では株式が急騰。高市氏が自民総裁に就任したことで財政拡張や金融緩和継続を期待した取引が優勢だ。日経平均株価は一時4万7800円台と過去最高値を更新した。
外国為替市場で円は対ドルで149円台後半に急落し、対ユーロでは過去最安値を更新。債券相場は先物や中期債が上昇している一方、新発30年や40年国債など超長期債は大幅下落(利回りは上昇)している。
少数与党
自民、公明両党は衆参両院で過半数を得ていないが、野党が一致して対立候補を擁立する動きはなく、来週にも開かれる臨時国会で高市氏が首相に指名される見通しだ。
高市氏は首相指名選挙の前の連立合意を目指すとしていたが、4日の記者会見では「相手のあることだ」と指摘。憲法改正、外交安全保障、財政政策などを議論し、「お互い納得できたら、そういう形がつくれたらうれしい」と述べるにとどめた。
今後は日本維新の会、国民民主党などと政策協議を通じ、信頼関係構築を目指すことになる。ただ、連立の枠組み拡大が実現しないままでは、野党が内閣不信任案提出を提出し、可決されるリスクを常に意識しながらの政権運営が続く。
また、国民の関心が高い物価高対策で対応を誤れば内閣支持率にも影響する。高市氏の自民総裁としての任期は2027年秋までの約2年間だが、先立つ同年春には統一地方選がある。長期政権を目指すには国民の期待をつなぎとめることができるかも課題となる。
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