自民党総裁に選出された高市早苗前経済安全保障相は、太陽光発電など再生可能エネルギーの比重を下げ、原子力発電を重視するエネルギー政策を推し進める構えだ。

同氏は「エネルギー自給率100%」を目指すとして、かねて次世代革新炉と核融合炉の早期実装を訴えている。こうした方針は、原発再稼働や新増設にかじを切り始めた近年政府の考えに通じる。

高市氏

一方、太陽光発電など再エネについては選別する姿勢だ。9月の総裁選への政策発表会見では、「これ以上私たちの美しい国土を外国製の太陽光パネルで埋め尽くすことには猛反対だ」と述べ、再エネ補助金制度を見直す考えを示した。日本勢が強みを持つとされる「ペロブスカイト」太陽電池については、開発や普及を推進するとしている。

ブルムバーグNEFの日本担当アナリスト、ウメル・サディク氏は「高市氏の勝利は、原子力や核融合、ペロブスカイト太陽電池といった新技術の勝利であり、特に外国製機器に依存する再エネにとっては打撃だ」と述べた。

再エネ普及を推進するシンクタンク、自然エネルギー財団の大林ミカ氏も、高市氏は気候変動対策の目標よりも、エネルギー安全保障を、再エネよりも原子力、グローバル企業よりも国内産業を優先するだろうと指摘した。

週明けの株式市場では、原発関連銘柄が買われた。関西電力は、一時前週末比5.8%高の2226円、東京電力ホールディングスは同6.5%高の742.6円を付けた。太陽光発電所などを開発するレノバとウエストホールディングスは、それぞれ同15%安、14%安となった。

ただ停止中の原発の再稼働をどこまで加速できるかは不透明だ。福島第一原発事故後に整備された新規制基準の下、国内33基のうち再稼働しているのは14基のみ。再稼働には厳しい基準をクリアするだけでなく、地元自治体の同意も必要となる。

 

高市氏が注目する核融合技術は、まだ発展途上にあり、商業化には数十年を要する見通しだ。日本政府は6月に核融合に関する国家戦略を改定し、2030年代に発電実証を目指す方針を示している。

日本エネルギー経済研究所の久谷一朗氏は、「原子力は、おそらく日米の利害が一致するところ」と指摘。米政府は小型モジュール炉(SMR)を後押しし、ウラン燃料のサプライチェーンも構築していくとしており、日本も協力しやすいとみる。ただ日本メーカーは大型の軽水炉を重視しており、SMRに手を出し切れていない面もあると付け加えた。

サディク氏は、高市氏が火力発電所などの廃止ペースを緩めつつ、二酸化炭素回収・貯留(CCS)やアンモニアの活用による脱炭素化を推進する可能性もあると指摘した。

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