石破茂首相は、米政権が求める対日貿易赤字を削減するため、日米関税交渉で米国車の輸入拡大を議論する考えを示した。

2日の日本記者クラブでの党首討論会で発言した。石破首相は、どうやって日本市場向けの自動車を作り、販売していくのかを「日本の安全を考えながら米国と議論する」と語った。米国車の日本国内での販売不振の理由として「ハンドルが左で、でかくて燃費が悪い」ことを挙げた。

石破茂首相

米国との関税交渉に臨む姿勢については「何としても国益を守り抜かねばならない」と述べた。日本は世界最大の対米投資国であり、最も雇用を生み出しているとして「他の国とは訳が違う」と指摘。日本製鉄とUSスチールの連携はうまくいったとし、米国の貿易赤字は減らすが、「基本にあるのは関税よりも投資だ」と強調した。

日米交渉はトランプ大統領が対日姿勢を硬化させたことで混迷が深まっている。発動済みの自動車への25%の分野別関税や全輸入品への一律関税に加え、9日に猶予期限を迎える上乗せ関税も適用されれば、日本経済に大きな打撃となる。交渉で成果が得られなければ、参院選にも影響を与える可能性がある。首相の発言は大統領が重視する米国車の輸入拡大に日本として努力する姿勢を示したものだ。

トランプ大統領は先週のFOXニュースとのインタビューでは自動車を巡り日本への不満を表明。「日本は米国の車を受け取らない。だが彼らは何百万台もの車を米国に持ち込んでいる。これは不公平だ」と語った。上乗せ関税の猶予期限を延長する必要はないとの考えも示していた。

1日には日本について「極めて大きな貿易赤字を抱えているため、30%や35%、あるいはわれわれが決める数字」の関税を課すことになるだろうと言明。「合意に至るかどうか分からない。日本と合意できると思えない。彼らは非常に手ごわい」と述べた。

一方、石破首相は、日本の国益にかなうものであれば、米国民が選んだ政権の政策に同盟国として歩調を合わせることもあるとしつつ、「国益に沿わない部分について、全て妥協することはわが国の国益確保の観点からあっていいことだとは思っていない」とも発言した。

トランプ政権が導入した関税措置は、自動車や鉄鋼・アルミニウムなど個別分野別に加え、輸入品全てに基本税率10%をかけた上で貿易相手国ごとに異なる税率を上乗せする仕組みがある。現在は上乗せ部分が一時停止されているが、9日の期限を迎えると、対日本の税率は24%となる。

対米交渉を担当する赤沢亮正経済再生担当相は2日夜、日米は「真摯(しんし)かつ誠実な協議を精力的に続けている」とし、現地時間6月30日にも事務レベルで協議したことを明らかにした。自らの8回目の訪米についても「必要だと判断すれば可能性は否定しない」とした。内閣府で記者団に語った。

(赤沢再生相の発言を追加し、更新しました)

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