(ブルームバーグ):加藤勝信財務相は、政府が保有する米国債の売却を対米関税交渉の手段とはしない考えを示した。アジア開発銀行(ADB)年次総会などに出席するため訪れていたイタリア・ミラノで4日(日本時間5日)行った記者会見で語った。
加藤財務相は、2日のテレビ東京の報道番組に出演した際の発言について問われ、「保有する米国債の売却に言及したものではない」と強調。その上で、「米国債の売却を日米交渉の手段とすることは考えていない」と話した。

番組では、今後の関税交渉の中で米国債を安易に売らないと明言することは日米協議の一つの手段になり得るかどうかを問われ、「カードとしてはあると思う。それを切るのか切らないのか、というのはまた別の判断だ」と発言していた。今回の会見では、これらの発言をより明確にした格好だ。
加藤財務相は、外国為替資金特別会計(外為特会)が保有する外貨資産について「わが国通貨の安定を実現するために必要な外国為替等の売買等に備え、十分な流動性を確保するという目的に基づいて運用しているものであり、今後ともその方針にのっとって適切に運用していく」と話した。
「経済の分断招く」
ADB総会に合わせて4日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓の財務相・中央銀行総裁会議が開催された。共同声明では、米関税措置の世界経済の影響が懸念される中、「貿易保護主義の高まりは世界貿易への重荷となり、経済の分断を招く」と指摘。「ルールに基づく自由かつ公正な多角的貿易体制へのコミットメント」を再確認するとともに、アジア地域の結束と連携のさらなる強化を呼び掛けた。
加藤財務相は、「足元の状況認識を互いに共有し、経済の安定化に向けて連携していくことの重要性を再確認した」と説明した。
同会議には日本銀行の氷見野良三副総裁も出席した。
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--取材協力:伊藤小巻、横山恵利香、野原良明.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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