世界情勢が不安定化する中、欧州中央銀行(ECB)は物価ショックへより迅速に対応できるよう、金融政策の戦略見直しに向け、本格的な検討に入る。

匿名を希望する関係者によると、政策委員会は5月6-7日にポルトガルのポルトで非公式会合を開き、現状の戦略見直しについて初めて詳しく議論する。ECBとユーロ圏20カ国の中央銀行のトップエコノミストで構成される金融政策委員会の報告書に加え、評価のために作られた2つの作業部会による報告書を精査するという。

経済的なショックがこれまで以上に頻繁にかつ劇的な形で起こりえる環境で、ECBは態勢の強化を図っている。昨年夏に始まった戦略見直しは、ECBが以前行った戦略見直しの結果を精査することに重点を置いている。

ECBは前回、2021年7月に戦略の見直しを発表したが、直後に記録的なインフレに直面し、利上げの対応に出遅れたとの批判を受けることになった。

現在、トランプ米大統領の関税政策によって世界市場が大きく揺れ動く様は、政治家が劇的な形で経済へ介入するようになった現在、経済見通しがいかに早く変化するかを浮き彫りにしている。欧州の経済見通しはここ数週間でひっくり返され、物価上昇がどこへ向かうのか、当局者の確信は揺らいでいる。

シュナーベル理事をはじめ複数の政策立案者は、世界経済のグリーン化、デジタル化が進み、貿易関係の緊張が高まる中、今後は供給の混乱がより頻繁に起こる可能性が高いと指摘している。当局者は、成長とインフレの分析方法を調整し、ショックに対しより柔軟に対応する必要に迫られている。

ECBのラガルド総裁は先月、検討結果のプレビューとして、これまで政策立案者が一時的な出来事とみなしがちだった供給への衝撃は、想像以上に長く影響を残し、持続的なインフレ圧力を生み出す可能性があると発言した。また、ECBの2%物価目標達成に対する決意は揺るがないが、常にこの水準で物価上昇を実現するのは、「今直面しているような環境では不可能」だと受け入れなければならない可能性があると指摘した。

ECBは2025年後半に見直しの結果を公表する予定だ。関係者によると、内部の目標としては、7月初旬に開催されるECBフォーラムでの発表を目指している。

ECB広報はコメントを控えた。

原題:ECB Drafts Plan for More Nimble Rate Moves After Inflation Pain(抜粋)

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