トランプ米政権が発表した関税措置を受け、ウォール街のエコノミストは米国が今年リセッション(景気後退)に陥るリスクがあり、インフレは再び加速する可能性があるとみている。

ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルは、輸入品に対する新たな関税を考慮した上で、2025年の米国内総生産(GDP)は0.6%増、基調的なインフレ率は4.7%への上昇を予想する。

バークレイズのエコノミストはGDPについて一段と悲観的な見方で、0.1%減を予想している。一方、インフレ率についてはやや楽観的な見方で3.7%を見込む。また失業率は年末までに上昇するとみている。

トランプ大統領が発表した関税措置は、世界の金融市場に混乱をもたらし、米経済の拡大は続くとの見通しが覆された。関税の影響について複数の大手銀行が示した暫定的な推計では、成長への大きな打撃とインフレ加速が示唆された。ただ関税措置が今後数日間に緩和される可能性もあるとして、各行とも正式に見通しを修正することは控えた。

UBSグループの米国担当チーフエコノミスト、ジョナサン・ピングル氏は「われわれの見方ではインフレ率が2026年にかけて上昇するだけでなく、GDPの減少と失業率の上昇も見込んでいる」と2日のリポートで指摘。「GDPは2四半期でマイナス成長を記録すると予想している」と続けた。

トランプ大統領は2日、世界の貿易相手国に対し相互関税を課すと発表し、大統領令に署名した。トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンでのイベントで、「長年にわたり、大半において米国の犠牲の下に他国が富と権力を得る中、勤勉な米国民は傍観者の立場を強いられてきた。だが今後はわれわれが繁栄する番だ」と述べた。米通商代表部(USTR)は主に既存の貿易収支を基に新たな関税率を算出したと説明した。

22Vリサーチのエコノミスト、ピーター・ウィリアムズ氏は「現在の政策がベースラインとして続くならば、2025年のコア個人消費支出(PCE)価格指数の予想は4-5%上昇のレンジに修正する必要があるだろう」と指摘した。

市場が混乱する中、投資家はインフレ率の上昇が予想されるにもかかわらず、年内に米金融当局が複数回の利下げを行うとの観測を強めた。先物動向によれば、次回5月7日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が発表する政策金利は0.25ポイント引き下げられる確率が約30%織り込まれている。

エコノミストは総じて金利見通しについてはより慎重な見方で、ピングル氏は米金融政策当局者は「反応するだろうが、最初は緩やかなペースだろう。その後インフレリスクによる経済への打撃が見られたら、そこで本格的な対応を取るとみている」と述べた。

パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日、経済見通しについて講演する予定。

原題:Economists Slash US Growth, Boost Inflation Forecasts on Tariffs

(抜粋)

--取材協力:Jarrell Dillard、Alexandre Tanzi.

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