トランプ米大統領が米東部時間2日午後4時(日本時間3日午前5時)過ぎにホワイトハウスのローズガーデンに立ち、貿易相手国からの輸入品に課す関税を記した特大プラカードを指さした瞬間、市場に現実が突きつけられた。

大統領はこれまでの発言通り、貿易戦争を大きくエスカレートさせることを明らかにした。株価指数先物は急落し、ドルも下落。投資家が安全資産に資金シフトを急ぐ中、米国債相場は急伸し、金は過去最高値を更新した。

ローズガーデンで関税発表を行ったトランプ大統領

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループの外国為替責任者、ブラッド・ベクテル氏は「人々の予想よりも攻撃的なことは間違いない」と述べ、「これは諸外国にとってより大きな悲観ループだ」と指摘した。

米国内の生産強化を目指し国際貿易を巻き戻そうとするトランプ氏の政策は、世界経済の混乱とインフレの再燃、米経済成長の停滞を招きかねないと懸念され市場を揺さぶっている。

ここ数週間、市場ではこうした懸念が繰り返し高まり、米株式相場の上昇に急ブレーキがかかり、その影響を懸念して企業の信用リスクの指標が上昇した。

ここ数日は、トランプ氏が相互関税の公約を実行に移さないとの観測が広がると相場は回復する局面もあった。2日のトランプ氏の記者会見が始まってすぐに、関税率が想定よりかなり低い一律10%に制限されるという報道が流れたため、株価指数先物は一時的に上昇したが、結局誤りだったことが判明。トランプ氏が米国への全輸出国に基本税率10%を、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に上乗せ税率をそれぞれ適用すると発言したのを受け、株先物は急反落した。

米東部時間午後9時30分までに、S&P500種株価指数先物は約3%下落し、ナスダック100指数先物は3.5%余り値下がりした。

こうした反応は、中国や欧州連合(EU)といった主要貿易相手国への関税大幅引き上げ措置による大きな影響をトレーダーが予想していることをうかがわせた。

BCAリサーチのチーフストラテジスト、マルコ・パピック氏は「今後、もっと下振れすることは明らかだ」と述べ、米株式相場が最終的にさらに10%下落する可能性があると予想した。

関税による経済的影響は複雑で、貿易相手国が報復措置を取るかどうかや、米企業が追加コストをどの程度消費者に転嫁するかに左右される。輸入コスト上昇でインフレ率が高進すれば、景気が失速しても米金融当局は大幅利下げを実施できないとの懸念も高まる。

JPモルガン・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、プリヤ・ミスラ氏は「これはリスクにとってマイナスだ」と指摘。「大統領が詳述したことは、全体としてスタグフレーションを招く。不確実性は解消されていない」と述べた。

3日のアジア市場でも混乱は続いている。中国や香港、日本の株式相場は下落した一方、安全資産に資金が殺到し円が急伸。米国債利回りは低下し続け、指標10年債は4.1%を割り込んだ。

景気動向に敏感な商品市場も打撃を受けた。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は2.5%下落。銅も値下がりしている。

原題:Fear Grips Markets as Trump Tariffs Raise Risks to Global Growth(抜粋)

(3日のアジア市場の動きを追加して更新します)

--取材協力:Ethan M Steinberg.

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