(ブルームバーグ):米株式相場下落の最悪期は終わったとの兆候を探している強気派は、内情に通じた投資家である企業幹部の動きに目を向けている。
米国株は先週大きく売られ、S&P500種株価指数は一時、直近高値からの下落率が10%に達して調整入りした。時価総額5兆ドル(約748兆円)が消える下げ局面となったが、企業関係者らは押し目で自社株買いに回帰した。調査会社ワシントン・サービスの企業インサイダーセンチメント指標によると、売り手に対する買い手の比率は3月半ばの時点で0.46と、1月の0.31から上昇。このまま行けば、月間ベースで昨年6月以来の高水準となり、過去の平均値近くに戻る勢いだ。
バイオ医薬品大手モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)はそうした買い手の1人で、3月に500万ドルの自社株を購入。クレジットカード会社アメリカン・エキスプレス(アメックス)や製油会社マラソン・ペトロリアムの取締役も株が売られていた局面で買いを入れた。
現在の企業経営者のセンチメントは、市場のパフォーマンス以外のさまざまな理由に起因している可能性がある。それでも、企業を最も良く知る幹部らによる株買いの増加は景気への信任票と解釈できる。少なくとも、過去2営業日の相場持ち直しを底打ちの兆しかどうかと考えている投資家にとってはそうだろう。
ラウンドヒル・インベストメンツのデーブ・マッツァ最高経営責任者(CEO)は、「企業の内部関係者が好機と受け止めて自社株を買い始めているとすれば、それは彼らが基調的な景気やビジネスに自信を持っていることの表れだ」と指摘。「単にニュースを材料にしているのとは異なる。ニュースはむしろ恐ろしい内容が多いからだ」と述べた。
売り手に対する買い手の比率が前回これほど上昇したのは昨年半ばで、当時は好調な企業決算や好景気、米利下げ観測の高まりを背景にS&P500種が最高値を更新し続けていた。
企業の自社株買い
内部関係者による購入は、投資家が株価の方向性を見極める上で注目する数多くのシグナルの一つに過ぎない。企業の自社株買いもその一つだ。市場調査会社ビリニー・アソシエーツによれば、今年これまでに発表された自社株買いは2980億ドルで、過去3番目の高水準となっている。
ただ、そのペースは今月に入ってかなり減速した。トランプ米大統領が4月2日に設定した関税発動に投資家や企業が身構えているからだ。月初来では企業の自社株買いは218億ドルと、7年ぶりの低水準にとどまっているという。
ビリニー・アソシエーツのジェフ・ルービン社長は、「3月の数字はホワイトハウスから発せられている不確実性を反映している」と指摘。「企業は何が起こるか分かっていない状態だ。ある程度状況がはっきりするまで、何かを発表するというリスクは取りたくないかもしれない」と続けた。
原題:Corporate Insiders’ Buying Burst Gives Confidence to S&P Bulls(抜粋)
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