(ブルームバーグ):トランプ米大統領から連邦捜査局(FBI)長官に指名されたカシュ・パテル氏は、トゥルース・ソーシャルの親会社トランプ・メディア&テクノロジー・グループから80万ドル(約1億2000万円)余りに相当する譲渡制限付き株式を先週受け取った。
この事実はしかし、パテル氏の資産開示文書にも倫理合意書にも記載されていない。連邦政府の役職に指名された人物は、潜在的な利益相反に対応するため保有資産の詳細を開示することになっている。
FBI長官に同氏が就任する是非は、こうした開示がされない状態で上院で検討される。利益相反への政府対応を研究する専門家によれば、パテル氏の株式取得が判明したタイミングは規制のグレーゾーンに該当する。
FBI長官に就任した後もこの株式を保持した場合、「トランプ・メディアの価値を損なうような行動を取れば、自身の財務状況に悪影響が及ぶ状況に同氏は置かれる」とワシントン大学セントルイス校で政府倫理を専門とするキャスリーン・クラーク教授は述べた。「FBIとしての捜査もそうした行動に含まれる」と続けた。
パテル氏の報道担当者にコメントを求めたが返信はない。

揺るぎない忠誠心
トランプ氏に揺るぎない忠誠を示しているパテル氏は、「ディープステート(闇の政府)」を批判し、FBIの権限限定を支持している。先週に上院で開かれた指名公聴会では、従来のFBI長官と異なり法執行機関での経験がないことや、FBIを利用して政敵を標的にするかどうかを巡り、厳しい追及を受けた。
トランプ・メディアの届け出によれば、同社がパテル氏に株式を付与したのは1月28日。譲渡制限が解除されるのは2027年3月だという。パテル氏は同社の取締役会メンバーであり、FBI長官への就任が承認されれば辞任する。企業に所属する人がその株式を付与されるのは一般的だ。
トランプ氏はトランプ・メディアの過半数株式を息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏が管理する信託に移管した。
それでも問題は解決されないとクラーク教授は指摘する。この問題に関する明らかな規定がなくても、パテル氏に財務開示と倫理合意を更新させ、付与された株式をどうするのか明白な説明をするよう議会は要求するべきだと教授は述べた。
「FBI長官に指名された人が就任前に80万ドルの贈与を受けたこと、それ自体が問題だ」と話した。
中国ファストファッション
開示された情報によると、中国のファストファッション通販企業SHEIN(シーイン)の親会社エリート・デポでも、パテル氏は少なくとも100万ドル相当の株式を保有しており、これを保持する計画だ。同社は米国で知的所有権を巡る問題などで提訴されている。
パテル氏はこのほか、アップルやエヌビディア、パランティア・テクノロジーズの株式に加え、ビットコインに投資する上場投資信託(ETF)の保有を開示した。いずれも承認から90日以内に手放す予定だ。同氏の資産は少なくとも450万ドルとされている。
トランプ・メディアと金銭的なつながりがあり、政権中枢ポストに指名された他の候補者らは、利益相反を避けるために関係を絶つ意向を示唆している。

司法長官に指名されたパム・ボンディ氏は、300万ドル近くに相当する同社株式を手放すことに同意した。この株式はトランプ・メディアの前身であるデジタル・ワールド・アクイジションへのコンサルティング料金だという。
カタール大使館
パテル氏のコンサルティング業務も利益相反につながる可能性があった。国家安全保障や国防、情報活動の専門知識を提供する同氏のトリシュル社は、過去2年間で210万ドルの所得を得た。カタール大使館も2024年11月までクライアントだった。同氏はその後1年間はカタールに関する事案への関与を辞退しなくてはならない。あるいは政府倫理関連の当局者から、関与の許可を書面で得る必要がある。
パテル氏の開示文書には、同氏がカタールに提供したサービスは起債されていない。外国政府の委託で活動する人物は、司法省に登録する必要があるが、同氏はこれを行っていない。
原題:Patel’s $800,000 Trump Media Award Raises New Conflict Questions(抜粋)
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