米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーは、動画配信サービス「Max(マックス)」でアジアに挑む。新規加入者の獲得に向け他社とは異なる戦略を採り、ローカルコンテンツの制作に数十億ドルを投じるのではなく、ハリウッドの大作映画や米国で人気のテレビ番組を重視する。

ワーナーは「ハリーポッター」や「フレンズ」など定評のあるシリーズ作品を頼りにアジア全域で視聴者を呼び込みたい考えで、競合のネットフリックスやウォルト・ディズニーとは一線を画す方針だ。

アジア進出において競合他社の後塵(こうじん)を拝したワーナーだが、現地のプラットフォームと提携しコンテンツへの支持を効率的に高め、巨額の初期投資を行うことなく会員基盤の拡大を狙う。

ワーナーのグローバルストリーミング・ゲーム部門最高経営責任者(CEO)、JP・ペレット氏はインタビューで、「この分野では遅れて参入することにメリットがある。なぜなら、ライバル勢は現地の素晴らしい作品を制作している素晴らしい現地企業と競争しようと多額の資金を費やし、おそらくそれらを無駄にしたからだ」と指摘。「われわれのアプローチは他社とは大きく異なる」と述べた。

世界人口の半分以上を占めるアジアで積極的な攻勢に出ようとしているMaxに対し、他の配信サービスは投資規模に比べて成長が鈍いことを踏まえ、アジア地域における優先順位を再定義している。

アマゾン・ドット・コムはインドと日本に焦点を絞るため、東南アジアから撤退。ディズニーも東南アジアへの投資を減らし、インドでの事業を現地パートナーと統合したほか、現地コンテンツ制作への投資を韓国のドラマや日本のアニメにシフトしている。

ワーナーの幹部は、アジア市場参入のタイミングがMaxにとって加入者を増やす最大のチャンスと見込む。アジアのユーザー1人当たりの平均売上高は欧米に比べ低くなるだろうが、加入者増加に寄与し、最終的には広告収入の拡大につながるとしている。

コンサルティング会社メディア・パートナーズ・アジアのエグゼクティブディレクター、ビベク・コート氏は「競争や予算を考慮すると、現地のコンテンツ投資戦略は当面は慎重かつ戦術的に行う必要がある」と指摘。Maxは2029年までに日本とオーストラリア、ニュージーランド、東南アジアの市場から年間6億ドル(約930億円)を超える売上高を得ることが期待されていると述べた。

Maxは日本ではU-NEXTと独占契約を結び、「ゲーム・オブ・スローンズ」や「セックス・アンド・ザ・シティ」など幅広い番組を提供。韓国ではまだ利用できないが、TVINGなどパートナー候補と協議を進めている。

原題:Netflix-Rival Max Rolls Out in Asia With Slate of Blockbusters(抜粋)

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