(ブルームバーグ):ロシアによる侵攻に1000日近く抵抗してきたウクライナの同盟国は、戦闘終結に向けプーチン大統領を交渉のテーブルに着かせる新たな方法を検討するようゼレンスキー大統領に迫っている。
戦争の早期終結を公約に掲げたトランプ次期米大統領は来年1月にホワイトハウスに復帰する。ドイツのショルツ首相は15日にプーチン大統領と電話会談し、和平協議への参加を促した。フランスのマクロン大統領も17日、適切な時期にプーチン氏と話す考えを示した。
欧州当局者2人によれば、ウクライナもロシアも決定的勝利を確実にできない状況が明らかになる中で、ゼレンスキー大統領はプーチン氏と妥協せざるを得ないとの認識が強まっている。
関係者によると、トルコのエルドアン大統領は18日にリオデジャネイロで開幕する20カ国・地域(G20)首脳会議で、現状の戦線で戦闘を凍結する案を提示する予定だ。
関係者が匿名を条件に明らかにしたところでは、エルドアン氏は、プーチン氏への譲歩の一環として、北大西洋条約機構(NATO)加盟協議を少なくとも10年遅らせることにゼレンスキー氏が同意するよう提案する見通し。
停戦を求める声の突然の高まりは、トランプ氏の大統領復帰で米国の支援が大幅に削減される可能性をにらみ、先手を打とうとするウクライナ同盟国の切迫感をうかがわせる。北朝鮮軍がロシア側に加勢する現状で、ウクライナの広大な地域を破壊し、何千億ドルもの金融支援や外国製の武器を大量に消費し、欧州や世界の地政学的関係を一変させた戦闘の停止を目指す機運が高まっている。
しかしプーチン大統領は、ロシア軍に多数の死傷者が出ているにもかかわらず、停戦を検討する姿勢はほとんど見せていない。先週にはショルツ氏に対し、常に協議に応じる用意はあるが、いかなる合意もロシアの安全保障上の懸念と領土獲得を考慮したものでなければならないと述べた。ロシア側は、ゼレンスキー大統領への圧力の高まりを消耗戦略が功を奏する兆候と解釈する可能性が高い。
バイデン米大統領にとって最後のG20首脳会議の開幕を18日に控え、米国はウクライナがロシア領に長距離ミサイル攻撃を行うことを容認する最終決定に近づいている。トランプ次期大統領就任前にゼレンスキー氏の立場を強化し、交渉を優位に進められるようにしたい思惑がある。
G20首脳会議に出席する中国とブラジルは5月以降、ロシアとウクライナが参加する国際会議の開催を呼びかけている。
ゼレンスキー大統領は16日、自国の公共放送に対し、来年には戦争を終結させたいと語った。同大統領は、ウクライナがロシアの攻撃により効果的に対抗し、プーチン氏に交渉を促す圧力を高めることを目指し、一層強力な兵器の追加供与を同盟国に求めている。
だが、ゼレンスキー氏はG20首脳会議に出席しない。ブラジルのルラ大統領は、招待を求める切実な訴えを無視。国際刑事裁判所が戦争犯罪容疑で逮捕状を出しているプーチン大統領は先月、出席すれば「混乱を招く」として、G20首脳会議への出席を見合わせると明らかにした。
原題:Ukraine’s Allies Are Leaning on Zelenskiy for Way to End War (1)(抜粋)
--取材協力:Alberto Nardelli、Samy Adghirni、Julien Ponthus.
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