(ブルームバーグ):トランプ次期米政権の財務長官の人選は週末に混乱状態に陥った。有力候補とされる2人が競って売り込みに動き、次期大統領の側近は代替候補探しに奔走。トランプ氏自身は舞台裏の混迷が公の場に表面化したことに立腹している。
資産家イーロン・マスク氏は財務長官候補として、キャンターフィッツジェラルドのハワード・ルトニック最高経営責任者(CEO)への支持を表明。これを受け、トランプ氏が起用を検討しているキー・スクエア・グループ創業者スコット・ベッセント氏はマスク氏と会談したと、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
財務長官の職務は28兆ドル(約4335兆円)規模の米国債市場と経済制裁の監督を含む極めて重要な閣僚ポストだが、トランプ氏自身もこうした内部対立にいら立ちを見せているようで、スタッフは代替候補を模索している。
具体的には、トランプ政権1期目で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏やハガティ上院議員(共和)、アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワンCEO、連邦準備制度理事会(FRB)元理事のケビン・ウォーシュ氏らの名前が挙がっているという。
財務長官以外では、ホワイトハウスの国家経済会議(NEC)委員長も羨望(せんぼう)の重要経済ポストの一つで、トランプ政権1期目で国家通商会議(NTC)委員長を務めたピーター・ナバロ氏らの名前が過去数日に浮上していると複数の関係者が語った。
マスク氏
マスク氏は自身のソーシャルメディアプラットフォームであるX(旧ツイッター)で、ベッセント氏と比較しつつ、ルトニック氏について大きな変化をもたらす人物だと評価した。ベッセント氏は15日にトランプ氏と面会している。

ベッセント、ルトニック両氏の支持者はトランプ氏に訴えようと、それぞれ電話攻勢を強めているが、そうした状況が緊張を生み、別の候補者が台頭する可能性を高めていると、意思決定に詳しい複数の関係者は述べた。
ルトニック氏は選挙戦の終盤でトランプ氏の資金調達を支えたほか、政権移行チームを率いる重要な役割を担っている。そうした背景もあり、財務長官ではない場合、大使職などルトニック氏が引き受ける可能性のある他の要職について一部の主要アドバイザーは検討していると、事情に詳しい複数の関係者は語った。
マスク氏はベッセント氏について、「代わり映えしない選択肢」とする一方、ルトニック氏については「実際に変化をもたらす」と投稿した。
関係者らによれば、ベッセント氏の支持者は16日、同氏とマスク氏との電話会談を急きょ設定した。同日夜には、マスク氏はトランプ氏とニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで総合格闘技団体アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)の試合を観戦。トランプ氏はその後、政権移行チームが本部を構えるフロリダ州パームビーチに戻ったという。ベッセント氏は現在パームビーチにいると、関係者らは語った。
ベッセント氏はコメントを控えた。マスク氏にもコメントを求めて連絡を取ったが、これまで返答は得られていない。
ベッセント氏は先週、FOXニュースとのインタビューで、トランプ氏の経済政策を称賛し、「今後4年間は黄金時代を迎える可能性がある」と指摘。製造業の米国への回帰、米国のエネルギー優位性、テクノロジーブームなどを挙げた。
一方、ルトニック氏はベッセント氏に反発する人物の1人で、事情に詳しい関係者によると、同氏について関税を含む主要な保護主義的公約に弱腰だとコメントしているという。
原題:Trump Treasury Cabinet Pick in Flux as Jockeying Slows Selection、Bessent, Lutnick in Final Push for Trump Treasury Secretary Pick、Bessent Spoke With Musk as Contest Endures for Treasury Post (1)(抜粋)
(財務長官ポストを巡る新たな候補者の浮上やNECポストに関する情報を追加して更新します)
--取材協力:Amanda L Gordon、Bill Allison、Justin Sink、Joshua Green.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.