山梨県の全面敗訴という控訴審での判断が下された県有地裁判。振り返るうえでこの3つのポイントがあげられます。

時間、費用、そして対立です。

時間

発端は2017年、南アルプス市の男性が「県が富士急行に貸す県有地の賃料が安すぎる」と提訴。県に対して富士急行や歴代知事にあわせて159億円を支払わせるよう求めました。

県は争う姿勢でしたが、長崎知事が就任後の2020年。

長崎幸太郎知事(2020年11月):
「従来の主張を撤回し、適切な方法で県有地の価値を算定する必要がある」

それまでの「開発する前の価格」で算定していた賃料を「開発した後の価格」に基づき算定するのが妥当で、現在の契約を「違法・無効」としました。
その上で年間賃料は現在の3億3000万円の6倍となるおよそ20億円が適当だとします。

これに対して富士急行は県を相手に「契約は有効」だとする訴えを起こしました。そして1審の甲府地裁の判断は県の全面敗訴。

長崎知事:
「判決に疑問に思う点も多々ある事から上級審でさらに議論を深めていく事が県民に対して知事としての果たすべき責務」

費用

長崎知事:
「それぞれのスペシャリストがチーム戦をやる世界の中で、山梨県の中でそれだけのチーム戦を組める弁護士事務所がどれだけありますか?ゼロですよ。断言しますよ」

議論を呼んだのが弁護士費用。

2021年度の当初予算案におよそ2億円が盛り込まれたのに対し、一部県議が「高すぎる」と反発。県議会は揉めに揉めます。

裁判費用に反対 皆川巌県議(当時):
「(知事と)話がついたっちゅうこんだよ。ドーンと減額したよ。ドーンと」

結局70万円に減額され予算案は成立します。

しかし、知事は弁護士におよそ1億4000万円の「着手金」の支払いを「専決処分」。

長崎知事:
「我々県にとって そこより有利な条件でやって頂ける弁護士は見出しがたい」

それ以前に弁護士に支払った費用と控訴の費用をあわせるとおよそ2億3000万円が費やされています。

対立

知事は「政治的な対立は全く関係ない」としていますが、関係者からは衆院山梨2区で富士急行を経営する堀内家と激しい選挙を繰り返してきた事が背景にあるという指摘が多くありました。

こうした中、自民党県議団が分裂。1月の知事選を前に反知事派が対立候補を擁立し立憲民主党の中島克仁衆院議員と「保革連合」の形をつくりますが長崎知事が再選しました。

裁判は再び県の全面敗訴となりましたが、2年半に及ぶ時間、およそ2億円に上る費用、そして様々な対立について県民が評価するのはこれからとなります。