「地方議員のなり手不足」が全国で顕在化しています。今年3月末に告示された山口県議会議員選挙では、15選挙区のうち、萩市・阿武町、下松市など5つの選挙区で無投票となりました。

この状況が続けばどうなってしまうのか?有識者に話を聞きました。

選挙制度の空洞化を懸念

山口県立大学で政治学などを教える井竿富雄教授は、地方議員のなり手不足の現状について、「非常に問題がある」と指摘します。

山口県立大学・井竿富雄教授

「なり手不足は、自由選挙という選挙制度そのものが空洞化しているということになりますから、あまりいいことではもちろんないですね。よっぽどその人の政策が評価されて誰も対抗に立たなかったというなら、まぁまだ言うこともできるでしょうけど、そういうことでなければ、非常に問題があるという気がします」

無投票ということは選挙公報に街頭演説、訴えや考えをマスコミが伝える報道がなくなります。訴えや考えが浸透しないまま地域の代表が選ばれることは不気味な感じがするとも述べました。

議員数を減らせば解決する?

そもそも「なり手不足」以前に、地域そのものの人口が減っていることが問題の背景の1つにあげられます。「人口が減っているなら議員数は減らせばいい」、そのような声もありますが、井竿教授は異論を唱えます。

井竿教授
「議員数を減らすことは、それだけ少数の人で決めていいんだということになってしまう可能性もありますし、大きい街で減らしてしまうと、それこそ選挙戦が激化して逆効果になるかもしれません」

また、立候補するにあたって仕事を辞める状況になったり、供託金を没収されたりというリスクの大きさも背景に挙げました。このまま進むとどうなるのか?井竿教授は「政治が一部の人たちによる閉じられたものとなり、一般の人はより参加しづらくなってしまう」と危機感を募らせます。

井竿教授
「1回民主化したんだけど、選挙をやってるうちに不思議な政治家が出てきて独裁政権みたいになった国もありますし、民主的な選挙制度を通じて不思議なことに非民主的な政治体制に移行してしまった、ということはよく言われていることです」

有権者の無関心が問題

有権者の政治への関心が薄くなっていることも問題の1つで、学生と話していても、その傾向を感じるといいます。

井竿教授
「民主政治というのは、気がついたら空洞化したり、壊れたり、なくなっちゃたりっていうことがすぐ起こるので、やっぱり常に有権者が政治を見とかないといけないものなんですね」

立候補しやすい環境づくりも必要
立候補しやすくするために、全国都道府県議会議長会では国にこんなことを要請しています。

・立候補に伴う企業等による休暇の保障

・地方議会議員の厚生年金への加入

立候補の環境を改善することで、多様な人材の議会への参画を促そうというものです。そして議員になってから働きやすいようにする環境の整備も必要だと思います。

山口県議会の取り組みは?

では、県議会ではどのような取り組みが進められているのか?議会改革検討協議会での協議を経て、議会の欠席事由に

・家族の介護、看護(2019年3月施行)

・育児、産前産後期間(2022年10月施行)

を追加しました。

このような制度的な整備も必要ですが、やはり、有権者の無関心が大きな課題です。「関係ない」ではなく、私たちの生活に密接に関わるものとして見ておかないと、井竿教授の指摘のように民主主義の空洞化が起きてしまう恐れがあります。