山口県下松市の自宅で、妻(当時67)を日本刀で切りつけて殺そうとした男(70)。
起訴状などによりますと、殺人未遂などの罪に問われている男は2022年1月、自宅で妻の背中を、日本刀で切りつけて殺害しようとしたとされます。妻は事件直後に意識不明の重体となり、胸の骨を折るなどを重傷を負いました。
山口地裁で開かれた初公判。男は白髪の短髪で、白いシャツに白色のダウンベストを重ね、ベージュのパンツ姿で廷内に現れました。開廷前はじっと下を見つめていました。

冒頭陳述で検察は、犯行の動機やいきさつを説明しました。男は「妻が浮気している」と思い込み、殺してしまおうと決意しました。事件当日午後6時ごろ、男は居間で妻と食事を始めました。その30分後、男は妻に「近くに住む男性と浮気しているのではないか」と問いただし、男性にその場で電話をするよう求めました。妻が電話をすると男性は応答しましたが、男は電話を切り、寝室のクローゼット内に保管していた日本刀を手に取りました。その後、様子を見に寝室に来た妻の背中を日本刀で切りつけたということです。
男は床に倒れ込んだ妻に「さっさと死ね」などと言ったものの、犯行から13分後に119番通報しました。妻は緊急手術で一命を取りとめたものの、両足まひなどの後遺症が残りました。
犯行に使用した日本刀は、男が40年ぐらい前に知人から観賞用として購入したもので、その3年後ごろから、妻の浮気を疑うようになったということです。
また弁護側によると事件当日、男は午後3時まで仕事をし、夕食時に酒を飲みながら鍋を食べました。その後意識を失い、気づいたときには「妻の背中に日本刀が乗っていた」と説明し、けがにはすぐには気づかなかったと述べました。明確な動機は男にも分かっておらず、精神面が不安定なのは本人も自覚していたとし、現在妻の申し出に応じて離婚届に署名をしました。
検察は「犯行は極めて危険で、生じた結果は重大。犯行に及んだ経緯や動機は強く非難されるべき」と断罪。弁護側は「結婚45年以上で孫もいる仲のよい夫婦だった」とし、執行猶予付きの判決がふさわしいと主張しました。「刀で人を切ることは危ない行為。私は殺意、殺すつもりはなかった」と起訴内容を一部否認した男。裁判員裁判で審理され、27日に判決が言い渡される予定です。