山口県の新年度予算案で、前面に押し出されているのが県の最重要課題・人口減少の克服です。この人口減少の要因には死亡数が出生数を上回る「自然減」、転出超過による「社会減」があります。

「10組に1組」…不妊治療の課題

「自然減の克服」、少子化対策について考えます。山口県は、新年度、不妊治療への助成を強化する方針です。10組に1組は不妊症、とも言われる中、治療の現場にはどのような課題があるのでしょうか。

山口大学医学部付属病院です。

山口大学医学部産科婦人科学講座・田村功講師
「月経、生理は順調にきてますか?」

患者
「10月からき始めたんですけど」

不妊症を専門とする産科婦人科学講座の田村功講師は、10年以上、不妊症の患者と接してきました。

人口減少を食い止める方策のひとつは出生数を増やすこと。しかし、2012年、1万人を超えていた県内の出生数は去年、7000人ほどにまで下がりました。国の推計では、2045年の県内の人口は100万人を割る見通しです。今のペースで死亡数が出生数を上回る「自然減」が続くと想定しての数字です。

田村講師

「県内のデータはなかなか無いんですが、やはりどんどん不妊症の患者様は増えておりまして、今大体10人に1人、10組に1組は不妊症と言われています」

田村講師によると不妊症の定義は、「1年頑張っても妊娠しないこと」。原因は、卵巣や子宮の病気など多岐にわたりますが、男性側が原因となっているケースも3割程度あるということです。

保険適用で不妊治療は増加傾向

不妊治療は主に3種類あります。エコー検査で排卵しそうな日を判断し、性交する「タイミング法」。排卵誘発剤を使いつつ濃縮した精子を子宮に入れて卵子との距離を近づける「人工授精」。体の外に出した卵子と精子を試験管で受精させ、培養した上で子宮に戻す「体外受精」です。

田村講師
「ここは体外受精の採卵、卵を取る場所になります。体外受精が昨年だと180人の方がうちでは受けられました。増加傾向ですね。やっぱり、おととし4月に保険適用になってからすごく増えています。1.5倍くらいになりました」

その奥には体外受精をする部屋。ここでは、最先端の機械も稼働していました。治療の金額は「タイミング法」は受診料、「人工授精」は1回数千円程度。県は「タイミング法」をはじめとする「一般的な治療」には1年度あたり3万円以内、「人工授精」では1年度あたり9千円以内の助成を設けています。この助成は、新年度も維持されます。

3種類の治療法の中でもっとも高額なのが「体外受精」です。もともとは保険がきかず、一般的には、30万円以上かかっていました。このころは、山口県では、国と県を合わせて1回あたり30万円が補助されていました。ところが・・・。