「罪を見つめる時間を」裁判官が男に語りかけた。

裁判官が判決の後に被告に語りかけることは「説諭」とも呼ばれ、多くの裁判で見られる光景だ。


しかし「罪から目をそむけている」といった言葉を使うことは、あまりない。

被告の男は、だまってその話を聞いていた。

75歳の男は、去年9月、入院していた病院でリハビリを担当の23歳の理学療法士に出会う。

男はその理学療法士に対する不同意わいせつの罪に問われ、山形地方裁判所で公判が行われていた。

きょうは判決の日。

くすんだ緑色のジャケット、白色のシャツにグレーのネクタイ。小柄でやせている白髪まじりの男は、証言台の椅子に座っている。少し背筋を伸ばして。