富山県魚津市で3年前、93歳の母親が死亡した事件。傷害致死の罪に問われた71歳の息子の裁判が始まりました。検察側は「家事をやっているのに母親が感謝の気持ちを持たない」として暴力を加えたと指摘。一方で息子は「母は老衰で亡くなった。軽く孫の手でたたいただけだ」と無罪を主張しました。事件に至るまで母子に何があったのでしょうか?裁判の詳報です。

事件が起きたのは2020年1月から2月16日ごろ。魚津市の自宅で無職の中田道宏被告(71)が、93歳の母親に複数回にわたって加え、死亡させたとして傷害致死の罪に問われています。

7日、富山地裁で開かれた初公判。検察側が傷害致死罪にあたるとする起訴内容を読み上げると中田被告は。

中田道宏被告:「全く違っている」

起訴内容を全面的に否認しました。さらに。

中田道宏被告:「年が93歳。高齢で、老衰で亡くなった。前日まで食事をとっていた。16日は食事が手についていない。病院で16日に亡くなった」

裁判長:「多数回暴力を加えたのは事実ですか?」

中田道宏被告:「処方された薬の中に血をサラサラにするものがあり、薬のせいで皮下出血になった。軽く孫の手でたたいただけだ。力いっぱいは加えていない」

無罪を主張する弁護側に対し、検察側が冒頭陳述を読み上げます。

検察側:「被告は被害者の長男で、弟は県外で生活していた。被告の父親は平成15年(2003年)に他界。被告は昭和42年(1987年)に高校を中退し、金属加工職人になった。平成16年(2004年)に退職、介護士や警備員として断続的に勤務していた」

中田被告は母親と2人暮らしになり、やがて無職に。母親が90歳になると、家事をするようになりました。そして事件の動機となることについて…。

検察側:「家事をしているのに母親が感謝の気持ちを持たないことから、被告人はいらだち、暴力を振るうようになった。弟が帰省したことをきっかけに、母親から被告人に対し、“弟と生活すればよかった”と軽んじているような発言もあった」

暴行の内容については…。

検察側:「母親に対し、腕、胸、尻、頭、足などに強い外力を加える暴行が、2人暮らしの密室の中で行われている。母親は暴行を受けて皮下出血などの傷害を受けた」

事件あった日のことについても。

検察側:「被告人が弟に電話し、母親が居間で大便を漏らしている。弟が“救急車を呼べ”とうながしたが、被告人は競輪場に向かった。その後、弟から救急車を呼べと何度か連絡があり、被告人はこのままでは俺が疑われると話していた。救急車が到着すると母親は居間で意識もうろうとした状態で倒れていた」

母親は亡くなる3時間前に看護師に対し「息子にぶたれた。痛い」と証言していたことも、明らかにされました。

裁判員裁判としての争点は、「いつどのような暴行を被告人が加えたか」「被告人の暴行と母親の死亡に因果関係があるか」に絞られました。

一方、弁護側は無罪を主張しました。