小さな郵便局がまるごと美術館になりました。富山県高岡市の伏木古府郵便局では障害のある人たちの作品が壁一面に展示されていて、個性あふれる表現に出会うことができます。
高岡市の伏木古府郵便局。5年前から始まった「Kofuーkofu(こふこふ)」展がことしも開かれています。

展示されているのは、知的障害のある人など専門の美術教育を受けていない人が衝動のままに表現する芸術「アール・ブリュット」。
郵便局の中には、たくさんの作品が、こんなところや、こんなところにも、所狭しと飾られています。
作品を描いたのは、郵便局近くに活動拠点を構える「障害者アート支援工房ココペリ」の作家たちです。
月に1、2回のペースでワークショップが開らかれ、作家たちが思い思いの表現活動を楽しんでいます。
ココペリは、もともと高岡支援学校・美術部の卒業生たちを支援する場として、顧問だった米田昌功さんが立ち上げました。
高岡市のシノタケさんは、美術部のOBでココペリ初期メンバーの一人。静かに作品と向かい合い、丁寧に丁寧に線を重ねています。

記者:
「今は描いている作品は何ですか」
シノタケさん:
「仏像」
黙々と描いているように見えて、仲間の会話を気にしながら創作を楽しんでいます。
ココペリ代表 米田昌功さん:
「不登校だったんですよ、まったく学校に来なかったんですよ。(シノタケさんは)絵が好きだからって担任の先生に言われて、それで学校に来られるようなきっかけにならんだろうかって相談されて」
米田さんは、シノタケさんと放課後に絵を描き始めました。
絵を描くうちに、シノタケさんは少しずつ学校にも通えるようになりました。
ココペリ代表 米田昌功さん:
「その時の絵ってこんな感じなんです。描いたものを消して終わるっていう、こっちも描いたものを消して終わる。でもすごかったですよ、その時から感覚が」
今回郵便局に当時のシノタケさんが描いた1枚が展示されました。
テーマは「千手観音」。

訪れた人:
「すごい。ポストモダン感あるんですね。ジャクソン・ポロックとか思い出す。好き、こういう抽象的な」

記者:
「千手観音の作品は覚えていますか」
シノタケさん:
「うん」
記者:
「いつ頃描いた作品ですか」
シノタケさん:
「支援学校のとき」
ココペリ代表 米田昌功さん:
「好きなものを描けば上手に描かなくてもなんか認めてもらえるっていう、自分は自分であっていいというところに、言語化はされてないとは思いますけど、そういう感覚というか安心感につながってたんだと思う」
伏木古府郵便局では、ことし、たくさんの作品をゆっくり楽しんでもらいたいと約40点が展示されました。
毎年恒例となった作品展を楽しみにしているお客さんや、金沢市など県外から訪れる人もいるそうです。
この愛らしい動物の作品は、高岡市の荒見真央(あらみ・まお)さんが郵便局で一気に描いたとか。

伏木古府郵便局 邑本友明局長:
「一心不乱に描いていて、どんどんどんどん色を重ねていく。もう自分のイメージでがーって描かれるもんで見ていてすごく圧巻」
訪れた人:
「本当にすばらしいと思います。色使いがすごいですよね」
訪れた人:
「元気よく描いてあっていいですね」
ことしも郵便局は、作家たちの豊かな個性とパワーに包まれています。
「Kofuーkofu」展は10月14日までです。
