遊水地の一部、農地として利用へ 実現すれば全国初

国が今計画を進めているのが、鏡石町、矢吹町、玉川村にまたがる遊水地の整備です。

4年前、台風19号による記録的豪雨で阿武隈川とその支流の堤防合わせて31か所が決壊し、県内の広い範囲に大きな被害をもたらしました。そこで、阿武隈川が蛇行していて、氾濫が起きやすい場所に遊水地を整備することで、このエリアだけでなく流域の郡山市や本宮市でも水害の被害を軽減することが期待されています。

遊水地の総面積は約350ヘクタールで、1500万から2000万立方メートルの水をため込むことができます。東京ドームで例えると、12杯から16杯分の水の量です。

この遊水地ができればかなり治水対策が進むことになりますが、これだけ広いため用地の取得が課題となっています。

この遊水地の予定地には、3町村合わせて約150戸の住宅があり、移転の対象となっています。さらには、広大な水田や畑も含まれていて、移転したとしても代わりの農地を確保できるかが懸念されています。そうしたことから、国は2028年度の遊水地の完成を目指していますが、予定地のうち買収の交渉が進んでいるのは地権者の約3割に留まっているのが現状です。

こうしたなかで、国は全国初の試みを行おうとしています。それは、整備後の遊水地の一部を農業用として利用するという試みです。整備後も水田や畑として利用できるように、国は有識者による検討会を来年1月までに設置し、調整を進めていきたいとしています。農家の方にとっては遊水地が完成した後も農業を続けることができるのは大きなメリットです。

一方で、遊水地の整備による掘削で、地質が変化することや農作物が冠水した時の補償など、農地として利用する場合には様々な対応が必要となってきます。いずれにしても移転する住民が納得する形での遊水地の利活用が今後求められます。