浪江町の帰還困難区域・赤宇木地区で、先月、1軒の家の解体が決まりました。この家は築170年とも言われ、赤宇木の歴史そのものと言ってもいい家です。

築170年の今野家。先月に解体することが決まった。


今回の解体は、地区の中でも限定的なもので、他の家との差に家主の男性は、複雑な思いを抱いています。なぜ、地区全体での除染や解体に至らないのか。この家から見える、帰還困難区域の問題について考えます。

帰還困難区域の浪江町赤宇木に集まった今野家のきょうだい

■家に別れを告げる「ツアー」

今年の憲法記念日。原発事故による帰還困難区域・浪江町赤宇木(あこうぎ)に、久しぶりに5人のきょうだいが集まりました。一男四女の今野家のきょうだいです。きょうだいの一人が歩きながらつぶやきます。

「なくなっちゃうと思うと泣けて泣けて……」

赤宇木で約700年つづく今野家の長男・今野邦彦さん


帰還困難区域にある5人の実家について、長男の今野邦彦さんは4月に、解体することを決めました。それに先立ち、邦彦さんは4人の姉に声をかけ、家に別れを告げる「ツアー」を企画しました。

赤宇木に入るとまずお墓参りをして先祖に手を合わせた


一行は赤宇木に入るとまず、お墓参りをして、多くの先祖一人ひとりに、手を合わせました。線香に火をつける姉に、邦彦さんは注意します。

「防護服は燃えやすいから気をつけて」と邦彦さんは注意する

「防護服は燃えやすいから気を付けて」

四女・竹之下道子さん「花輪が中平の門からずっと数珠つなぎで並んでいたの」

道子さんは、浪江町の名士だった祖父が亡くなった際のことを記憶しています。墓地から300メートルほど離れた家まで、追悼の花が並んだといい、見慣れた景色の中に、子どもの頃の思い出が残されています。墓に供えられた柏餅を見て、長女・原田かつ子さんも、思い出を話しました。

母との思い出を語る長女・原田かつ子さん


長女・原田かつ子さん「柏餅は母ちゃんとなんぼ作ったかわからない。柏の葉を取ってきて、隣近所に配って。最高の思い出」