「888ページ、全体が怒り」

出版されて以降、記録誌は大きな反響を呼び、今野さんも、各地で講演に呼ばれるようになりました。講演会では、ふるさとの現状に加え、本に込めた思いなどを語っています。今回も集まった人を前に、編集委員として、一押しの記事を紹介しました。

今野さん「注目記事をピックアップします。例えば「地名の部」。行政がつけた地名じゃなくて、地元の人たちにしか通じない地名というものが結構あります。ヒキチャクボとか、マツタケザワとか、ダイコンザカとか。極めつけは、忠吉っつぁんとこの橋とか。これだけでわかる。人の顔まで思い浮かぶんですよね」

このほか、地域で話されていた方言も数多く収録されています。その中には、こんな「解説」も…。

今野さん「傑作なんですけど、方言を方言で解説しているんですよ。うちの編集委員長。しっぱめる→つっぱめること。さらにわからねえっていうね(笑)のどにつかえることをしっぱめるというんですが、それをつっぱめることって解説しても…(笑)」

自分たちで手作りすること、登場人物を匿名にしないこと。編集にあたり、今野さんたち編集委員がこだわった点です。そしてもう1つ、重要なこだわりがありました。

今野さん「編集者として怒りの言葉は書いていません。個人のページで個人が怒っていることはありますが、編集者としては、恨み言は書いていません。というのは、言葉で表現し切れないからです。要は888ページ、全体が怒りを表現している」

このほかにも、地域で行われていた芋煮会やボウリング大会といった小さなイベントから、昔から伝わる葬儀の方法まで、その時まで地域にあった営みのすべてが収録されています。