福島県内で長く愛されている老舗の今を伝える「老舗物語」。今回は250年もの歴史を誇る本宮市の老舗糀店です。震災や水害を乗り越え、新たな挑戦を続ける10代目を見つめます。
本宮市で糀を使った食品を製造する「糀和田屋」。創業253年もの歴史を誇る老舗です。
10代目の三瓶正人さん。先代から受け継がれた、昔ながらの製法を守りながら糀づくりを続けています。
--三瓶正人さん(糀和田屋 10代目)「機械でつくる糀もあるけどやっぱり手作りで、温度とか状態を感じながら作るほうがいい糀になりますので。」
糀づくりで最も重要なのは「温度管理」です。ふかした米はすぐに糀室に運ばれ、冷ます作業が行われます。
--三瓶さん(糀和田屋 10代目)「糀菌も生き物なので、人間と一緒で過ごしやすい環境だとよく育つし、それが暑すぎたり、寒いとよく育たないので、そこに気を使ってやっています。」
湿度や温度を一定に保ちながら、数時間ごとに手作業で糀を混ぜる。この作業を3日間続けると・・・。米の周りに真っ白な花が咲き、うま味と香りが広がる品質の高い「糀」が完成します。
「糀和田屋」が誕生したのは1771年。江戸時代までさかのぼります。
--三瓶さん(糀和田屋 10代目)「もともとはこの近くの農家の作った農作物を買ったり、売ったりという商売をやっていたが、そこからお米を糀にするという仕事を始めて、そこから糀を使った味噌とか醤油を作るようになって今に至ります。」
長期保存が可能な「乾燥糀」をはじめ、味噌や醤油などの主力商品を軸にこれまで商いを続けてきました。いまから16年前。10代目として三瓶さんが店を引き継ぎました。
--三瓶さん(糀和田屋 10代目)「自分の家を継いで糀屋というのもすごい日本の伝統的な食文化の要のものなので、それをつくるのに携われるのもいい事なのかなと思った。」
しかし、店を継いで3年目の2011年、震災、原発事故が発生。地震による工場への被害に加え、県産米を原料に使っていたため、風評被害にもさらされました。それでも、市場で売れなくなった県産のコメや果物を使ったオリジナルの甘酒を開発して、復興を後押ししてきました。
震災の影響がようやく落ち着き始めたと思った2019年10月。さらなる困難が糀和田屋に降りかかりました。