被災地に限らない日本社会が抱える課題
映画を制作した島田陽磨監督。2020年から3年ほど福島に通い、取材を続けてきました。
島田陽磨監督「人間は物理的な基盤だけではなく、精神的な安定とか心の基盤っていうのがちゃんと整った状態でないと生活できない生き物ですので、メンタルクリニックを運営していらっしゃる蟻塚先生と、連携して活動されている米倉さんに連絡を取って、お2人の「背越し」に見える今の福島の現実があるんじゃないかと考えた」

インフラの復旧やオリンピックといった復興を伝えるニュースの影で、何が起きているのか。その疑問が制作のきっかけだったといいます。取材を進める中で、被災地に留まらない、日本の社会が抱える問題にも気が付きました。
島田監督「何か喪失感であったり、虚無感であったり、無力感であったり、何か葛藤を抱えて生きている方は非常に多いと思う」
映画は福島が抱える現実のひとつを描いた作品であると同時に「生きづらさ」という、より普遍的なテーマも含んでいると言います。

島田監督「生きづらい世の中と言われて久しくなりましたけど、そういった方々にも普遍的な視点で見ていただければいいなと」
蟻塚さんも共通する思いを映画に込めました。
蟻塚さん「世間の価値でなくて、生きていることそのものに対する感謝とか肯定的な思いとか、そういうものを伝えたい」

蟻塚医師によりますと、福島では震災後、児童虐待の相談件数が7倍以上に増えたというデータもあるということです。親の抱えているストレスが、子どもにも影響していると蟻塚さんはみていて、今後、ますますこういう問題が、深刻になるのではと指摘しています。
ドキュメンタリー映画「生きて、生きて、生きろ。」は、6月7日からフォーラム福島で上映され、9日には、蟻塚さんと看護師の米倉一磨さん、島田監督3人の舞台挨拶も行われます。