弱い立場の人たちの現状を理解しているのか?

Aさんと同じ黒松第二住宅でおよそ50年暮らすBさんもそのひとりです。

Bさん(75):
「弱い者の立場、住民の置かれている状況を全然考えていない」

方針を決めてから説明会を開くのは順番が逆で、入居者の現状や意見を直接、確認してから検討を始めてほしかったと話します。

Bさん:
「コミュニティの問題もあるし、長く住んでいるから地域の人たちとのかかわりができてきている」

病気の妻と2人で暮らすCさんは、去年5月に引っ越してきたばかり。県の計画に一定の理解を示していますが、移転以外の方法はないのか疑問も感じています。

Cさん(77):
「病気の女房を抱えて引っ越し作業。また同じことを繰り返せっていうのはね、死刑宣告と同じようなもの」

年金生活者や収入が高くない世帯への社会保障の役割を果たしてきた県営住宅。

県営住宅で暮らすAさん(75):
「のちのちは県営住宅全部なくすというような方針みたいに感じるから、どこに行こうが結局不安は付きまとう」

入居者は安心して暮らし続けられることを願っています。

国の試算などから、今後20年余りの間、県内の公営住宅と、それと同水準の家賃で入居できる民間賃貸住宅の供給量は合わせて9万から10万世帯と推計されています。それに対し、需要は8万世帯前後で推移すると見られています。県が県営住宅の廃止・集約の方針を打ち出した背景には、供給量が需要を上回っているという現状があるわけです。一方で、入居者の中には移転するのが難しい事情がある人もいます。「県の計画は結論ありきだ」と、自分たちの事情がないがしろにされていると感じている入居者が実際にいるわけで、県は引き続きより丁寧に説明・検討をしてくことが求められます。