「病院に行って」母の懇願で精神科へ 「違っていいんだよ」「違うことって個性なんだ」

牧野:何かそれを脱するターニングポイントはあったんでしょうか?

宮本:家の中でもう大混乱になっちゃって、父も酔っ払って、僕が学校行かないから悪いんだって僕に暴力をふるうことがあって、母と僕が外へ逃げたんですね。そのときに母が「もう、わかった。あなた本当に学校行きたくないんでしょ」って言ってくれて、僕が「学校が悪いわけじゃないんだけど、もう怖いんだよ」と言ったら、「お願いだから約束してほしいことがある。それを約束してくれたらもう学校行かなくていい」っていってくれたんで、「いいよ、約束するよ」って言ったら、「病院に行って」って母に言われたんですよ。病院の精神科に見てもらいましょうと約束してしまって、最初はびっくりしちゃったんですけど、精神科医に診てもらったというのがきっかけでした。

牧野:実際行かれてみて、病院の印象というのはいかがでしたか?

宮本:病院の前に立ったときは、「僕はもうこれで、いよいよ終わりなんだ。病院に閉じ込められる。周りからはダメなやつという刻印を押される」と思って先生に会ったら、まったく違っていて、先生は何一つ否定しない方で、「そうか、そんな考えもあるんだ、おもしろいね。宮本くんっておもしろいね」としかいわなかったんですね。

牧野:いい先生でしたね!

宮本:びっくりしました。正直言うと、最初これで診察料もらっているのっていいたいぐらいだったんだけども、それが僕にとってはよかった。いままで普通は学校に行くもんだ、みんなとは違うと周りからいわれていたので、その精神科医に通うようになって、「違っていいんだよ」、「違うことって個性なんだ」、「いやおもしろいんだよ、それはおもしろいんだよ」って言ってくれたことが、演出家になった原点になったと感じています。

牧野:いま、悩みを抱えてる方の中にも、なかなか友達や家族には相談しにくいという方もいると思いますが、ひょっとしたら、お医者さんに行くことによって解決に向かうこともあるかもしれないんですね。

宮本:お医者さんでもいいかもしれないし、まったく違う人でもいいかもしれない。どうしても普通というのが求められてしまうと、本当に個性があるおもしろい考えや、そういう光る原石を持っている人たちが、そこで封鎖されちゃうんで、それこそもったいない。いまはネットもあるし、「あれおもしろいよね」って一緒に話せたりする仲間たちとつながって、「将来、僕はゲームを作るんだ」っていうこともあるかもしれない。当時、僕は怖くて変われなかったけれども、とりあえず恐れずに、人はみんな違ってていいと、そんな違う個性があるから素晴らしいんだっていうことを知ってもらうとうれしいですよね。